加藤喬の司法試験・予備試験対策ブログ

質問コーナー

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処分証書についての「記載された説」と「よってした説」の違い

いつも大変お世話になっております。秒速・過去問完全攻略講義2019の受講生です。
司法試験の平成24年民事訴訟法設問1(1)について質問がございます。
加藤先生は、上記講義の解説2頁(イ)第1段落において、記載された説を前提に、「処分証書は、その成立の真正が認められた場合、要証事実たる法律上の行為の具現物ないし化身であるということができるから、裁判所は、成立の真正が認められた処分証書によって、挙証者が作成者であると主張する特定人が記載内容通りの法律上の行為を行なったと直ちに認定することができる…。」と説明なさっています。
司法研修所編『事例で考える民事事実認定』(法曹会、2014年)36頁によると、この説明は、よってした説を前提としたものに読めるのですが、記載された説にも妥当するものなのでしょうか。
ご回答いただけますと幸いです。

記載された説(司法試験委員会の立場)とよってした説(司法研修所の立場)の違いは、処分証書に当たるというためには、①要証事実たる法律上の行為が当該文書に記載されていることに加えて、②文書の成立の真正が認められることまで必要であるかという点にあります。記載された説では①だけで処分証書であると認定することができるのに対し、よってした説では①に加えて②まで認められないと処分証書であると認定することができないわけです。

事例で考える民事事実認定(法曹界、2014年)36頁では、㋐「処分証書については、形式的証拠力が認められれば、特段の事情を検討することなく、作成者がその文書に記載されている意思表示その他の法律行為を行ったと認定してよいと考えられます。」という記述の直後に、㋑「もっとも、その記載及び体裁から処分証書の外観を有する文書であっても、偽造文書の場合もあり得るわけですから、作成者がそこに記載された法律行為をその文書によって行ったかどうか、つまりその文書が処分証書であるかどうかは、審理してみなければ分からないことです。」とあります。

㋐と㋑の関係から、㋐における「処分証書」は、㋑における「その記載及び体裁から処分証書の外観を有する文書」を意味していることになります。したがって、㋐については、正しくは、よってした説からは、「処分証書については、…特段の事情を検討することなく、作成者がその文書に記載されている意思表示その他の法律行為を行ったと認定してよいと考えられます。」と読み替えることになります。

よってした説では、処分証書に当たるというために文書の成立の真正まで認定されていることになるため、「処分証書については、形式的証拠力が認められれば…」という仮定をする余地はありません。

参考にして頂けますと幸いです。

2021年03月22日
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加藤ゼミナールは、加藤喬講師が代表を務める予備試験・司法試験のオンライン予備校です。

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加藤ゼミナール代表取締役
加藤 喬かとう たかし
加藤ゼミナール代表取締役
弁護士(第二東京弁護士会)
加藤ゼミナール代表
青山学院大学法学部 卒業
慶應義塾大学法科大学院(既修) 卒業
2014年 労働法1位・総合39位で司法試験合格
2021年 7年間の講師活動を経て、「法曹教育の機会均等」の実現と「真の合格実績」の追求を理念として加藤ゼミナールを設立
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