加藤喬の司法試験・予備試験対策ブログ

質問コーナー

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全体の奉仕者性は違憲審査のどこで論じるべきか

「君が代」起立斉唱職務命令拒否事件の判旨で言及されている「住民全体の奉仕者として法令等及び上司の職務上の命令に従って職務を遂行すべきこととされる地方公務員の地位の性質及び職務の公共性」という点は、違憲審査の枠組みどの部分で論じるべきでしょうか。違憲審査基準を緩やかにするための事情として用いるのか、それとも、違憲審査基準の適用(手段必要性の検討)で触れるべきか、悩んでおります。
お忙しい中恐縮ですが、ご回答いただけると幸いです。

論文試験において「君が代」起立斉唱職務命令拒否事件について論じる場合、判例の判旨を学説上の違憲審査基準論に引き直して、保障⇒制約⇒違憲審査基準論の定立・適用という流れに従って論じることになると思われます。

同事件で言及されている公務員の全体の奉仕者性は、公務員の政治活動の禁止に関する猿払事件・堀越事件や公務員の労働基本権の制限に関する全農林警職法事件等で言及されている公務員の全体の奉仕者性と同様、公務員の人権に対する制約の根拠に位置づけられます。

違憲審査基準の厳格度は、職業規制等の一部の場面を除き、人権の性質と制約の態様を考慮して判断されます。思想良心の自由に対する制約の場合、原則通り、人権の性質と制約の態様を考慮して違憲審査基準の厳格度が判断されますから、制約の目的は違憲審査基準の厳格度を判断する過程では考慮されません。そうすると、違憲審査基準を適用する段階で考慮されることになります。

公務員の全体の奉仕者性については、まず初めに、目的審査で考慮されます。これが制約の根拠だからです。その上で、手段の適合性・必要性(及び相当性)において、これらに関連する限りにおいて考慮されることになります。

2021年02月20日
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加藤ゼミナールは、加藤喬講師が代表を務める予備試験・司法試験のオンライン予備校です。

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加藤ゼミナール代表取締役
加藤 喬かとう たかし
加藤ゼミナール代表取締役
弁護士(第二東京弁護士会)
加藤ゼミナール代表
青山学院大学法学部 卒業
慶應義塾大学法科大学院(既修) 卒業
2014年 労働法1位・総合39位で司法試験合格
2021年 7年間の講師活動を経て、「法曹教育の機会均等」の実現と「真の合格実績」の追求を理念として加藤ゼミナールを設立
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