加藤喬の司法試験・予備試験対策ブログ

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共謀共同正犯の訴因のままで幇助の事実を認定することの可否

加藤先生、お世話になっております。
いつもブログやTwitterでの有益な情報の発信ありがとうございます。
訴因変更の縮小認定について1点質問させていただきたいことがございます。
2021版総まくり論証集「刑事訴訟法」55~56頁[論点2]縮小認定の1で、共謀共同正犯の訴因で、起訴状に明示されていないと仮定した縮小事実である幇助の事実を認定する場合の訴因変更の要否について、最決平成13.4.11が示した第1段階の審判対象画定の観点から、訴因変更が必要であるとしています。
しかし、共謀共同正犯と幇助は、法律的評価を基礎付ける具体的事実関係は同一である以上、訴因変更は不要なのではないでしょうか?(論証集では具体的事実関係は示されていませんが)
下記論文21頁以下(pdf内の95頁以下)にも同趣旨のことが記載されていると思いました。
https://core.ac.uk/download/pdf/293153935.pdf
お忙しいところ、大変恐縮ですが、宜しくお願い致します。

秒速・総まくり論証集55~56頁[論点2]では、検察官が幇助の事実を訴因として潜在的・黙示的に主張していないと仮定して、縮小認定の可否に先立ち、訴因変更の要否から検討しています。そして、訴因変更の要否については、古江頼隆「事例演習刑事訴訟法」第2版216頁における「共謀事実も幇助事実も訴因の特定にとって不可欠な事実であり、両者の食い違いは構成要件を異にするもので(共謀共同正犯は、刑法60条による基本的構成要件…の修正形式、幇助は刑法62条による基本的構成要件…の修正形式)、「実質的な食い違い」ということができ(平野・前掲152頁は、裸の事実としては極めて僅かな事実の食い違いでも、それが構成要件的評価を変えさせるようなものであるときは、「重要な変化」とする)、本来であれば第1段階の訴因変更手続を要するはずものです…」との記述に依拠しています。

ご指摘の清水登「立教法務研究第9号」95~96頁によれば、①「法律的評価を基礎付ける具体的事実関係」に全く変化がなく、事実に対する法的評価が変わっただけであれば、事実の変動がないため、訴因変更は不要であり、②法的評価の対象となる事実まで変動した場合には、訴因変更が必要となる、と理解することになります。

論証集については、②を前提にしたものであると理解して頂ければと思います。①の場合、そもそも、訴因で”明示された”事実と裁判所の心象事実(又は認定事実)との間にすら食い違いがないため、縮小認定の可否すら問題とならないからです。

参考にして頂けますと幸いです。

2021年02月07日
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加藤ゼミナールは、加藤喬講師が代表を務める予備試験・司法試験のオンライン予備校です。

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加藤ゼミナール代表取締役
加藤 喬かとう たかし
加藤ゼミナール代表取締役
弁護士(第二東京弁護士会)
加藤ゼミナール代表
青山学院大学法学部 卒業
慶應義塾大学法科大学院(既修) 卒業
2014年 労働法1位・総合39位で司法試験合格
2021年 7年間の講師活動を経て、「法曹教育の機会均等」の実現と「真の合格実績」の追求を理念として加藤ゼミナールを設立
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