加藤喬の司法試験・予備試験対策ブログ

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取立債務における特定と口頭の提供の要件の違い

大変お世話になっております。
民法における、取立債務における特定(401条2項前段)と口頭の提供(493条但書)の違いについて、質問させて頂ければと思います。
取立債務における特定では、分離・準備・通知が必要とされていますが、口頭の提供では、準備・通知のみで足り分離までは必要とされていないと思います。
その理由は、どのように考えたらよろしいでしょうか。特定の効果と、弁済の提供の効果の違いにあるのでしょうか。
なお、分離まで必要とする取立債務の特定の方が、口頭の提供よりも、債務者に要求される行為が加重されていることからすると、取立債務の特定によって生じる効果に着目しているかと思いました。
初歩的なご質問となり、大変申し訳ございませんが、宜しくお願いいたします。

改正前民法下では、種類物債権の特定には対価危険の移転(債務者⇒債権者)という強力な効果が伴う(改正前民法534条1項・2項)ことに着目し、取立債務における特定の要件を厳格に考えるべきであるとの理由から、準備・通知に加えて分離まで要求されていました。口頭の提供の効果よりも取立債務の特定の効果のほうが強力であることに着目して、取立債務の特定の要件を口頭の提供の要件よりも厳格に理解していたわけです。

しかし、改正民法下では、給付危険と対価危険の双方が種類物の特定から切り離されており、特定された目的物の引渡しに結び付けられていますから、取立債務の特定の要件に関する理解が変更されることになります。

質問者様の理解は改正前民法を前提としたものなので、改正民法を前提とした議論が紹介されている書籍で確認なさることをお薦めいたします。潮見佳男「プラクティス民法 債権総論」第5版補訂、潮見佳男ほか「詳解 改正民法」初版あたりがお薦めです。

2021年01月10日
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加藤ゼミナールは、加藤喬講師が代表を務める予備試験・司法試験のオンライン予備校です。

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加藤ゼミナール代表取締役
加藤 喬かとう たかし
加藤ゼミナール代表取締役
弁護士(第二東京弁護士会)
加藤ゼミナール代表
青山学院大学法学部 卒業
慶應義塾大学法科大学院(既修) 卒業
2014年 労働法1位・総合39位で司法試験合格
2021年 7年間の講師活動を経て、「法曹教育の機会均等」の実現と「真の合格実績」の追求を理念として加藤ゼミナールを設立
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