加藤喬の司法試験・予備試験対策ブログ

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令和2年予備試験刑事訴訟法 一事不再理効の時間的範囲に言及するべきか

令和2年の予備試験の刑事訴訟法の問題についてです。一事不再理効の時間的範囲について、特に問題が顕在化しなくとも、念の為に記載すると、余事記載として減点されるのでしょうか。それとも減点も加点もなくスルーされるという感じでしょうか。

一事不再理効が及ぶから免訴判決を言い渡すべきであるとの結論を採用する場合、一事不再理効が及んでいるとの結論を導くために充足する必要がある要件(客観的範囲及び時間的範囲)を全て認定する必要がありますから、時間的範囲にも言及するべきであると考えます。例えば、逮捕に伴う無令状捜索の要件は①時間的限界②場所的限界③物的限界に分類されるところ、①が問題なく認められる事案でも、適法との結論を導くのであれば①まで認定する必要があります。刑事訴訟法に限らず、法律効果の発生を認める場合には、その法律効果に対応する法律要件を全て認定する必要があります。

他方で、令和2年予備試験の事案では、時間的限界が問題なく認められます。時間的限界の論点は、後訴の訴因が前訴の訴因の起訴後に発生した場合に顕在化するものですから、後訴の訴因が前訴の訴因の起訴前から発生していた本問(前訴の訴因の起訴が令和元年6月20日、後訴の訴因の発生が令和元年5月15日)では顕在化しないわけです。したがって、時間的限界について、論点として論じる必要はありませんし、そうするべきでもありません。例えば、平成25年司法試験刑事訴訟法の採点実感では、逮捕に伴う無令状差押えの適法性が問われている事案において、「逮捕する場合」が問題なく認められるにもかかわらず「逮捕する場合」について論点として手厚く論じている答案について、「本事例では、司法警察員Pは、逮捕の約10分後に本件【差押え】を実施しており、同法第220条第1項の「逮捕する場合」の要件を満たすことは明らかである。それにもかかわらず、この点について相当の分量を割いて論述する答案が散見され、事例に即して論じる健全な感覚を欠き、無意味なマニュアル的論述に終始する弊に陥っているのではないかと危惧された」と批判されています。司法試験でも予備試験でも、大原則として加点方式が採用されているため、余事記載をしても余計な記載に点数が入らないだけであり、積極的に減点されることはないのが通常ですが、余事記載が採点官の印象を悪くすることを通じて間接的に採点に悪影響を及ぼす場合もあります。

したがって、一事不再理効が及ぶから免訴判決を言い渡すべきであるとの結論を採用する場合、時間的限界についても簡潔に言及するべきであるが、言及する際には論点として丁寧に論じることは避ける、というのが適切な対応であると考えます。

2020年12月21日
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加藤ゼミナールは、加藤喬講師が代表を務める予備試験・司法試験のオンライン予備校です。

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加藤ゼミナール代表取締役
加藤 喬かとう たかし
加藤ゼミナール代表取締役
弁護士(第二東京弁護士会)
加藤ゼミナール代表
青山学院大学法学部 卒業
慶應義塾大学法科大学院(既修) 卒業
2014年 労働法1位・総合39位で司法試験合格
2021年 7年間の講師活動を経て、「法曹教育の機会均等」の実現と「真の合格実績」の追求を理念として加藤ゼミナールを設立
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