加藤喬の司法試験・予備試験対策ブログ

質問コーナー

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処分性の文言としては「行政法の処分その他公権力の行使に当たる行為」を丸々引用するべきか

加藤先生こんにちは。総まくり2021を受講していて気になった点がありましたので質問させてください。
処分性についての総まくり2021の論述例では、『「行政庁の処分」(3条2項)とは・・』とのように書かれているのですが、論文試験では「その他公権力の行使に当たる行為」のところまで引用しなくてもよいのでしょうか?
判例は結論部分でも『「行政法の処分その他公権力の行使にあたる行為」に当たる』と書いており、厳密にどちらに当たるかは明らかにしてないようです。特に本来的な処分性の要件を満たさず、実効的な権利救済の観点から処分性を認めた、病院中止勧告事件などのような場合では、実際の論文で「行政庁の処分」に当たると言い切ってしまうと、厳密には間違いであり、また理解が乏しいとの印象を与えてしまうのではないかと不安に思いました。
これらの点に関する加藤先生のご理解をお聞かせいただければと思います。

よろしくお願いします。

行政事件訴訟法3条2項が処分性について「行政庁の処分その他公権力の行使に当たる行為」として「その他公権力の行使に当たる行為」という文言を付加しているのは、学問上の行政行為だけでなく一定範囲の公権力的事実行為についても処分性を認めて抗告訴訟の対象にするためです(曽和・野呂・北村「事例研究行政法」第3版41頁)。

そうすると、①法効果性ありとして処分性を肯定する場合には「行政庁の処分」だけ引用すれば足りる一方で、②「公権力の行使に当たる事実上の行為で、人の収容、物の留置その他その内容が継続的性質を有するもの」(旧行政不服審査法2条1項)という意味での継続的性質を有する公権力的事実行為について処分性を認める場合と、③法効果性がない公権力的事実行為のうち継続的性質を有しない行為(例えば、病院開設中止勧告)について権利救済の必要性から例外的に処分性を肯定する場合には、「行政庁の処分その他公権力の行使に当たる行為」まで引用する、という理解が正確であると考えます。

参考にして頂けますと幸いです。

2020年11月21日
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コメント

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    やはり②,③の類型では「その他公権力の行使に当たる行為」まで引用するのが正確なのですね。
    疑問が氷解いたしました。
    ご回答いただきありがとうございます。

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加藤ゼミナールは、加藤喬講師が代表を務める予備試験・司法試験のオンライン予備校です。

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加藤ゼミナール代表取締役
加藤 喬かとう たかし
加藤ゼミナール代表取締役
弁護士(第二東京弁護士会)
加藤ゼミナール代表
青山学院大学法学部 卒業
慶應義塾大学法科大学院(既修) 卒業
2014年 労働法1位・総合39位で司法試験合格
2021年 7年間の講師活動を経て、「法曹教育の機会均等」の実現と「真の合格実績」の追求を理念として加藤ゼミナールを設立
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