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抵当権に基づく物上代位と債権譲渡の優劣

「抵当権に基づく物上代位と債権譲渡の優劣」の論点において、抵当権者が債権譲渡に関する第三者対抗要件具備よりも先に抵当権設定登記を具備したものの、債権譲受人が物上代位に基づく「差押え」(372条1項・304条1項但書)の前に弁済を受けている場合、抵当権に基づく物上代位は認められないのでしょうか。

「抵当権に基づく物上代位と債権譲渡の優劣」の論点については、①抵当権に基づく物上代位権行使の前提要件である「払渡し又は引渡し前」の「差押え」(372条1項・304条1項但書)と、②前提要件①をクリアした場合に問題となる物上代位権と債権譲渡の優劣の判断基準という2つの次元に分けて理解する必要があります。

最二小判平成10・1・30・百Ⅰ88は、抵当権に基づく物上代位権行使の前提要件である「払渡し又は引渡し前」の「差押え」の趣旨について「二重弁済を強いられる危険から第三債務者を保護する」ことにあると理解することにより、「払渡し又は引渡し」には債権譲渡やこれについての第三者対抗要件具備は含まれず、債権譲受人に対する弁済まであって初めて「払渡し又は引渡し」に該当するとして、①について、抵当権者が債権譲受人に対する弁済に先立ち「差押え」をすれば、「払渡し又は引渡し前」の「差押え」という要件を満たす、と解しています。

次に、抵当権者が債権譲受人に対する弁済に先立ち「差押え」をしたことにより、「払渡し又は引渡し前」の「差押え」という要件を満たした場合には、抵当権に基づく物上代位権行使が前提要件を満たすことになるため、抵当権に基づく物上代位権行使と債権譲渡の優劣についていかなる基準に従って判断するべきかとして、②の論点が顕在化します。これについて、本判決は、「抵当権の効力が物上代位の目的債権についても及ぶことは抵当権設定登記により公示されている」等の理由から、抵当権設定登記と債権譲渡についての第三者対抗要件の具備の時期の先後により優劣を判断するとの考えに立っています(内田貴「民法Ⅲ 債権総論・担保物権」第4版508頁)。

ご質問の事例では、①の論点の時点で、抵当権者が負けることになりますから、②の論点に辿りつきません。①物上代位権行使の「有効」性と、②「有効」性を前提とした「対抗関係」は別次元の問題であり、①をクリアしなければ②は問題とならない、ということです。

2020年10月05日
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加藤ゼミナールは、加藤喬講師が代表を務める予備試験・司法試験のオンライン予備校です。

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加藤ゼミナール代表取締役
加藤 喬かとう たかし
加藤ゼミナール代表取締役
弁護士(第二東京弁護士会)
加藤ゼミナール代表
青山学院大学法学部 卒業
慶應義塾大学法科大学院(既修) 卒業
2014年 労働法1位・総合39位で司法試験合格
2021年 7年間の講師活動を経て、「法曹教育の機会均等」の実現と「真の合格実績」の追求を理念として加藤ゼミナールを設立
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