加藤喬の司法試験・予備試験対策ブログ

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司法試験・予備試験論文で要求される「答案の論理の繋がり」

答案を他人に読んでもらうと、所々論理が飛躍していたり、文章の意図がつかめないと言われることがあります。 論理の繋がった文章を書くためには、どういった勉強をすることが効果的でしょうか。

論理の繋がりについて、過度に気にしないように気を付けましょう。

論理を繋げる必要があるという漠然と気持ちで勉強すると、論証・当てはめが冗長になったり、実益の乏しい問題提起等の前置きが多くなったりする危険があります。

司法試験であれば、120分・8頁という制約の中で、大・中・小という配点項目(例えば、刑法なら、大:罪名、中:体系・要件・論点、小:事実の摘示・評価)を出来るだけ多く拾う必要がありますから、完全に論理を繋げることは不可能です。どこまで論理を繋げればいいのか(逆に言えば、どこまで論理を飛ばしていいのか)のラインを見極めることが大事です。

司法試験過去問(予備試験受験生であれば予備試験過去問)で一通、答案を書いてみましょう。その後で、1桁~2桁前半の超上位答案(出来るだけ短い答案が望ましいです)を写経してみましょう。写経により、超上位答案の思考過程を辿ることで、本当に自分の答案で論理が飛んでいるのか、ここは答案戦略上あえて論理を飛ばしても構わないところなのかといったことが、見えてくるかもしれません。

例えば、論証では、完全に論理を繋げることは不可能ですし、論証の理由付けは採点上そこまで重視されていません(規範と当てはめのほうが重視されています)。そのため、論証のうち、理由付けで高得点を目指すのは非効率ですから、論証では論理が飛んでも構いませんし、むしろ他の検討事項を出来るだけ多く網羅するために敢えて理由付けの論理を飛ばすべきであるともいえます。

当てはめでは、事実の摘示・評価をする過程で、この「事実」がどうしてこのように「評価」されるのかという「理由」について、丁寧に書く必要はありませんし、この「事実」からほぼ当然にこの「評価」になるというのであれば、評価の「理由」は飛ばして構いません。例えば、刑法の事案で、甲が乙を高さ10mの地点から突き落としたという事案であれば、突き落とされた地点が高ければ高いほど、落下時の衝撃が強くなるから死亡の危険性が高いという「評価」が当然に導かれるので、「どうして突き落とされた地点が高ければ高いほど、落下時の衝撃が強くなるか」という理由まで書く必要はないわけです。評価の方向性が一義的である事実については、「評価」の「理由」までは書かなくていいということです。さらに言えば、大事なことは「事実」の摘示とこれに対する「評価」ですから「評価」の「理由」を書くべき事実であっても、時間がないのであれば「理由」を飛ばして構いません。

それから、問題提起については、既存論点であれば、原則として省略して構いません。仮に書くとしても、論証や当てはめとの重複を避けるために、できるだけ短くするべきです。これに対し、 現場思考論点のうち、問題の所在の把握で差がつきやすい論点では、問題提起を長めに書いても構いませんし、むしろそれが望ましいこともあります。現場思考問題では、問題の所在把握がいい加減だと的外れな方向性の解釈を展開してしまう危険がある一方で、解釈の中身について時間をかけて考えてもさほど説得力のあることを思いつかないのが通常ですから、的外れな方向性の解釈を展開することにならぬよう、問題の所在把握に時間をかけるという意味でも、問題提起を書いたほうが良いと思います。

論文試験では、採点者をイメージすることが大事です。採点者は問題文・解答筋を熟知している法律の玄人であり、似たような答案を複数採点しているのが通常ですから、受験者と採点者の共通言語であるテクニカルタームを使いまくっても、摘示した事実の評価の「理由」を飛ばしても、問題提起等の前置きを飛ばしても、何を書いているのかが採点者に伝わります。

なので、司法試験・予備試験の採点において、丁寧さという意味で、論理が飛んでいると評価されて不利益な評価を受けることはけっこう稀であると思います。ご質問には「文章の意図がつかめないと言われることがある」ともあるので、もしかすると、丁寧さが足りないのではなく、接続詞の使い方も含めて文章表現に問題があるのかもしれません。分かりやすい日本語の使い方(採点者に伝わりやすければいいので、「美しさ」までは不要です)、超上位答案から学ぶべきことの1つですから、文章表現についても超上位答案で確認してみましょう。

2020年10月02日
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加藤ゼミナールは、加藤喬講師が代表を務める予備試験・司法試験のオンライン予備校です。

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加藤ゼミナール代表取締役
加藤 喬かとう たかし
加藤ゼミナール代表取締役
弁護士(第二東京弁護士会)
加藤ゼミナール代表
青山学院大学法学部 卒業
慶應義塾大学法科大学院(既修) 卒業
2014年 労働法1位・総合39位で司法試験合格
2021年 7年間の講師活動を経て、「法曹教育の機会均等」の実現と「真の合格実績」の追求を理念として加藤ゼミナールを設立
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