加藤喬の司法試験・予備試験対策ブログ

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違法収集証拠排除法則の当てはめにおける、覚せい剤の証拠としての重要性の説明の仕方

予備校の答練で、覚せい剤単独所持の被告事件における違法収集証拠の派生証拠である覚せい剤の証拠能力について、毒樹の果実論を使って検討する際に、「本件覚せい剤は、覚せい剤単純所持罪の所持を基礎づけることができる直接証拠であるため(覚せい剤取締法41条の2第1項)、派生証拠としての証拠価値の重要性が高い。」と書いたのですが、「直接証拠」の部分で、ペケをつけられました(ペケの理由については、書かれていませんでした)。覚せい剤は、覚せい剤単純所持の所持部分を基礎づける直接証拠であると思っていたのですが、違うのでしょうか。

覚せい剤だけでは、覚せい剤所持(客観的構成要件要素の一つ)を直接に証明することはできないと思います。目撃供述や自白がなければ、覚せい剤の発見状況などの間接事実により、被告人の覚せい剤所持という主要事実を推認するものであると考えます。この推認過程において、覚せい剤という物は、覚せい剤の発見状況という間接事実を証明する証拠の一つとして間接証拠に位置づけられます。そのため、覚せい剤は、覚せい剤所持を立証するための重要な証拠ではありますが、直接証拠ではない、という位置づけが適切であると考えます。当てはめでは、「覚せい剤は、覚せい剤所持を立証するための重要な証拠である」とだけ書き、間接・直接に言及する必要はないと考えます。

それから、直接証拠の証拠価値が必ずしも間接証拠に勝るというわけではないと思います。直接証拠は、間接事実の立証を媒介とすることなく主要事実を立証し得るというだけであり、証拠価値如何によっては、主要事実を立証できないことがあります。直接証拠が主要事実を証明する力をどれだけ持っているのかは、直接証拠の性質等により異なります。例えば、甲のVに対する殺人罪における甲の犯人性を立証し得る証拠として、「甲がVを刺すところを見た」旨の認知症患者Wの供述(直接証拠)と、犯行に使用された包丁から甲の指紋が発見されたとする鑑定結果(間接証拠)とでは、後者の証拠価値のほうが高いです。このことからしても、証拠としての重要性を論じる際に、無理をしてまで、直接/間接に言及する必要はないと考えます。

2020年09月15日
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加藤ゼミナールは、加藤喬講師が代表を務める予備試験・司法試験のオンライン予備校です。

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加藤ゼミナール代表取締役
加藤 喬かとう たかし
加藤ゼミナール代表取締役
弁護士(第二東京弁護士会)
加藤ゼミナール代表
青山学院大学法学部 卒業
慶應義塾大学法科大学院(既修) 卒業
2014年 労働法1位・総合39位で司法試験合格
2021年 7年間の講師活動を経て、「法曹教育の機会均等」の実現と「真の合格実績」の追求を理念として加藤ゼミナールを設立
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