加藤喬の司法試験・予備試験対策ブログ

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29条の適用により組合に当事者能力を認めた場合における、組合員への判決効の拡張の有無

秒速・総まくり17頁[論点2]では、29条の適用により、組合債権者を原告、民法上の組合を被告、組合債権を訴訟物とする給付訴訟の提起を認めた場合において、確定判決の既判力は組合員には及ばないとされていますが、それは何故でしょうか。組合による組合員のための任意的訴訟担当又は解釈による法定訴訟担当であると構成すれば、115条1項2号の適用により、組合員に対する既判力の拡張を認めることができるのではないでしょうか。

29条については、①同条に該当する団体には、訴訟上の当事者能力のみならず実体法上の権利能力も認められるとする見解(この見解によると、組合には、実体法上の権利能力に基づき団体固有の当事者適格が認められる)と、②同条に該当する団体には訴訟上の当事者能力しか認められず、実体法上の権利能力までは認められないとする見解(この見解によると、団体には訴訟担当者としての当事者適格が認められる)があります(伊藤眞「民事訴訟法」第6版125頁、髙橋宏志「重点講義  民事訴訟法  上」第2版補訂版188頁・12参照)。

②の見解からは、団体には、構成員全員を権利義務主体とする訴訟担当者として当事者適格が認められるのだから、115条1項2号の適用により、判決の既判力が構成員全員にも拡張されることになります。これに対し、①の見解からは、団体には訴訟担当者としてではなく固有の当事者適格が認められているのだから、115条1項2号の適用はなく、その結果、判決の既判力は構成員全員に拡張されないことになります。判例は②、通説は①であると理解されています(伊藤眞「民事訴訟法」第6版128頁、髙橋宏志「重点講義  民事訴訟法  上」第2版補訂版188頁・12参照)。

2020年09月09日
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加藤ゼミナールは、加藤喬講師が代表を務める予備試験・司法試験のオンライン予備校です。

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加藤ゼミナール代表取締役
加藤 喬かとう たかし
加藤ゼミナール代表取締役
弁護士(第二東京弁護士会)
加藤ゼミナール代表
青山学院大学法学部 卒業
慶應義塾大学法科大学院(既修) 卒業
2014年 労働法1位・総合39位で司法試験合格
2021年 7年間の講師活動を経て、「法曹教育の機会均等」の実現と「真の合格実績」の追求を理念として加藤ゼミナールを設立
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