加藤喬の司法試験・予備試験対策ブログ

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経営判断の原則の適用場面

経営判断の原則を書くべき事例であるかどうかについて、どのように判断すればいいのでしょうか。任務懈怠が問われる場面ではいかなる場合でも経営判断の原則が問題になる気もするのですが、これはやはり問題文の事情から書くと判断するしかないのでしょうか。

まず、経営判断原則は、法令違反行為事案、取締役・会社間の利益衝突事案(356条1項1号~3号に該当する場合に限らない)、及び監視義務違反事案には適用されませんから、まずはこれらの点を確認します。会社の事業の性質からして重要な法令に違反したことを公表するかどうかの判断、内部統制システムの構築については、争いがあります(伊藤ほか「リーガルクエスト会社法」第4版233頁、「判例百選会社法」第3版・事件52解説)。

次に、最一小判平成21・7・9(百52)が問題となっている判断事項が「将来予測にわたる経営上の専門的判断ゆだねられている」と述べた上で経営判断原則を適用していることから、問題となっている事項が「 将来予測にわたる経営上の専門的判断ゆだねられている」に該当するのかを確認します。これに該当するのであれば、経営判断の原則を適用することができます。平成19年司法試験設問2のように経営判断の原則が正面から問われる問題では、「将来予測にわたる経営上の・・判断」の過程に関する事情が問題文にちりばめられていると思われます。

なお、経営判断の原則は、取締役の冒険的な経営判断を萎縮させないために取締役に広い裁量を認めることで、善管注意義務・忠実義務違反についての裁判所の審査密度を低くする考え方です(「判例百選会社法」第3版・事件50・52解説、江頭憲治郎「株式会社法」第6版484頁、髙橋ほか「会社法」第2版213頁参照」)。そのため、取締役の冒険的な経営判断を尊重するために広い裁量を認めるべき判断事項かどうかが、経営判断の原則の適用の有無を決することになると考えられます。

2020年09月08日
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加藤ゼミナールは、加藤喬講師が代表を務める予備試験・司法試験のオンライン予備校です。

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加藤ゼミナール代表取締役
加藤 喬かとう たかし
加藤ゼミナール代表取締役
弁護士(第二東京弁護士会)
加藤ゼミナール代表
青山学院大学法学部 卒業
慶應義塾大学法科大学院(既修) 卒業
2014年 労働法1位・総合39位で司法試験合格
2021年 7年間の講師活動を経て、「法曹教育の機会均等」の実現と「真の合格実績」の追求を理念として加藤ゼミナールを設立
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