加藤喬の司法試験・予備試験対策ブログ

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判断過程審査に関する規範について、どのように表現するべきか

判断過程審査に関する規範について、「判断過程に過誤があれば裁量権の逸脱・濫用となる」と書いているのですが、これでも問題ないでしょうか。

判断過程審査に関する規範について、正確性をやや犠牲にしてコンパクトに書くのであれば、「行政庁の判断過程に不合理な点があれば、裁量権の逸脱・濫用に当たる」という表現がお薦めです。判断過程審査とは、行政庁が考慮すべき事項を考慮せず、又は考慮すべきでない事項を考慮したのではないかというように、「行政庁の判断過程に不合理な点がないか」を審査する方法だからです(中原茂樹「基本行政法」第3版133~134頁、北村・野呂ほか「事例研究行政法」第3版103頁)。

正確性を重視するのであれば、「判断過程が合理性を欠く結果、処分が社会観念上著しく妥当を欠く場合には、裁量権の逸脱・濫用に当たる」という表現がお薦めです。近時の最高裁は、「判断過程が合理性を欠く結果、処分が社会観念上著しく妥当を欠く」という形で、社会観念審査の枠組みの中に判断過程審査を位置づけることにより、ある程度踏み込んだ審査していると理解されています(中原茂樹「基本行政法」第3版134頁、北村・野呂ほか「事例研究行政法」第3版103頁)。令和1年司法試験・採点実感でも、「裁量権の逸脱濫用という一般的な論述はされているものの、その後の本件の事例での当てはめにおいて、調査における考慮不尽イコール裁量権の逸脱濫用とするのみで、その判断過程において社会通念に照らして著しく妥当性を欠くとまでいえるようなものかという点の検討がされているのかどうか、答案上、明らかでないものがある。」と言及されているので、司法試験委員会も「判断過程が合理性を欠く結果、処分が社会観念上著しく妥当を欠く場合には、裁量権の逸脱・濫用に当たる」という規範を前提にしているといえます。

なお、判断過程の「過誤」と「不合理」が同じ意味ではありませんから、仮に正確性をやや犠牲にしてコンパクトな表現を用いるとしても、「判断過程に過誤があれば裁量権の逸脱・濫用となる」という表現は用いないほうが良いと思います。

2020年09月07日
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加藤ゼミナールは、加藤喬講師が代表を務める予備試験・司法試験のオンライン予備校です。

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加藤ゼミナール代表取締役
加藤 喬かとう たかし
加藤ゼミナール代表取締役
弁護士(第二東京弁護士会)
加藤ゼミナール代表
青山学院大学法学部 卒業
慶應義塾大学法科大学院(既修) 卒業
2014年 労働法1位・総合39位で司法試験合格
2021年 7年間の講師活動を経て、「法曹教育の機会均等」の実現と「真の合格実績」の追求を理念として加藤ゼミナールを設立
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