加藤喬の司法試験・予備試験対策ブログ

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論文試験で使える判例知識を身につけるためのコツ

以前、加藤先生のブログの記事で、「論文対策として憲法判例を学習する際には、㋐判例を違憲審査の枠組みに落とし込むことに加え、㋑理解・記憶の水準で妥協することと、㋒理解を深める場合には段階的に深めていくということにも留意する」、「例えば、泉佐野市民会館事件判決を「保障⇒制約⇒違憲審査基準の定立⇒適用」という違憲審査の基本的な枠組みに落とし込んで理解する場合、1周目では、「本判決は、集会規制について、厳格審査の基準に属する「明らかな差し迫った危険の基準」を採用した」というくらい抽象的な知識だけ身につけておけば足りる」、「それから徐々に、2周目、3周目と進むにつれて、現実的に可能な範囲で、上記表のように理解を深めていけば足りる」と助言を拝見しました。1周では一言で説明できる範囲・深さで判例知識を身につければ足りるとありますが、論点が複数ある判例については、1周目の学習範囲をどこまで広げればいいのでしょうか。例えば、三菱樹脂事件大法廷判決では、憲法の私人間効力と労働者の思想・良心の自由と企業側の経済的自由(雇用の事由)の対立について言及されていますが、どちらを優先的に学習するべきかについて、指針はございますでしょうか。

一つの判例に論点が複数ある場合には、論点ごとに一言で説明できるようにまとめることになります。もっとも、その際、論文試験で出題される可能性の高いと考えられる論点から優先的にまとめ、出題可能性が高くないと考えられる論点のまとめは1周目で飛ばして2周目以降に残しておく(あるいは、2周目以降でもまとめない)というやり方が望ましいと考えます。

例えば、三菱樹脂事件大法廷判決(最大判昭和48・12・12・百Ⅰ9)であれば、①憲法の人権規定の私人間効力について、憲法の人権規定が対国家的なものであるから私人間に直接適用されないとする一方で、私法の一般条項の解釈・適用の際に憲法の趣旨・精神を取り込むという形で憲法の人権規定が私人間に間接的に適用されることを肯定した、②企業者による労働者の思想・信条を理由とする採用拒否等について、㋐憲法22条・29条を根拠として企業者に雇い入れの自由を認めることで、思想・信条を理由とする採用拒否は当然に違法とはならないとするとともに、㋑そうである以上、企業者が採用決定に当たり労働者の思想・信条を調査したり、これに関連する事項の申告を求めることも違法ではないとした、とまとめることになります。

①②のいずれか一方だけをまとめるというのであれば、①を優先します。①が②の前提になっているという意味で、①のほうが汎用性の高い論点だからです。

 

2020年09月07日
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加藤ゼミナールは、加藤喬講師が代表を務める予備試験・司法試験のオンライン予備校です。

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加藤ゼミナール代表取締役
加藤 喬かとう たかし
加藤ゼミナール代表取締役
弁護士(第二東京弁護士会)
加藤ゼミナール代表
青山学院大学法学部 卒業
慶應義塾大学法科大学院(既修) 卒業
2014年 労働法1位・総合39位で司法試験合格
2021年 7年間の講師活動を経て、「法曹教育の機会均等」の実現と「真の合格実績」の追求を理念として加藤ゼミナールを設立
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