加藤喬の司法試験・予備試験対策ブログ

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厳格審査の基準・中間審査の基準における手段適合性の当てはめ 

岐阜県青少年保護育成条例判決は、中間審査基準の厳格度に相当する違憲審査をしており、だからこそ「規制対象行為が保護法益を侵害する」という因果関係については「社会共通の認識」という「科学的証明」に劣る立法事実の支えがあれば足りる、ということまでは理解できました。逆にいえば、一般論として、厳格審査の基準では、「規制対象行為が保護法益を侵害する」という因果関係を支える立法事実として「科学的証明」までが要求され、それがない場合には手段適合性を欠ものとして違憲になる、という理解でよろしいでしょうか。

その理解で問題ありません。厳格審査の基準・中間審査の基準では、目的・手段の双方につき、立法事実を根拠とした心証形成が必要とされます。立法事実を根拠とした心証形成という点における両者の違いは、立法事実として要求される客観性の程度です。有害図書規制の憲法21条1項適合性等が問題になった岐阜県青少年保護育成条例事件(最小三判平成元・9・19・百Ⅰ50)及び同事件の伊藤正己裁判補足意見によれば、厳格審査の基準では立法事実として「科学的証明」レベルのことまで要求されるが、中間審査の基準では「社会共通の認識」で足りる、と理解することになります。

手段適合性が認められるためには、㋐規制対象が立法目的にとって有害であるという因果関係と、㋑当該規制手段が規制対象による立法目的の阻害を阻止するという効果を有することが認められる必要があります。立法事実による裏付けは、主として㋐で問題になります(理論上、㋑でも問題となりますが、まれだと思います)。有害図書規制を例に挙げるなら、厳格審査の基準を採用した場合には、「有害図書が・・青少年の健全な育成に有害であるという」因果関係について「科学的証明」レベルの根拠がない以上、㋐を欠くとして(その結果として、有害図書規制は青少年の健全育成という規制目的を促進するものではないことになり)手段適合性が否定されることになります。もっとも、㋐を欠く場合であっても、㋑にも配点があることがありますから、㋑も検討するのが望ましいです。例えば、岐阜県青少年保護育成条例事件における規制を「有害図書を自動販売機に収納する際には、直径2cm以上の(18禁)シールを張ること」というものに修正した場合、自動販売機で小さい(18禁)シール付きの有害図書を購入することによる心理的抵抗は微弱であるから、青少年を有害図書に触れさせないようにする効果がないとして、㋑を欠くとの理由から手段適合性が否定されることになります。

2020年09月07日
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加藤ゼミナールは、加藤喬講師が代表を務める予備試験・司法試験のオンライン予備校です。

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加藤ゼミナール代表取締役
加藤 喬かとう たかし
加藤ゼミナール代表取締役
弁護士(第二東京弁護士会)
加藤ゼミナール代表
青山学院大学法学部 卒業
慶應義塾大学法科大学院(既修) 卒業
2014年 労働法1位・総合39位で司法試験合格
2021年 7年間の講師活動を経て、「法曹教育の機会均等」の実現と「真の合格実績」の追求を理念として加藤ゼミナールを設立
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