加藤喬の司法試験・予備試験対策ブログ

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中間目的と究極目的のいずれを規制目的として捉えるべきか

秒速・総まくり「第1章 答案作成上の作法」及び秒速・過去問攻略講座平成28年の答案では、平成28年司法試験GPS埋設による性犯罪者の継続監視を定める性犯罪者継続監視法について、規制手段から最も近い「性犯罪の再発の防止」を規制目的として捉えています。これに対し、薬事法事件大法廷判決(最大判昭和50・4・30・百Ⅰ92)では、「薬局偏在⇒薬局の過当競争⇒薬局の経営不安定⇒不良医薬品が供給されることで国民の生命・健康が危険に晒される」という構造を前提として、規制手段から最も遠い「不良医薬品が供給されることで国民の生命・健康が危険に晒される」自体を防止することを規制目的として捉えています。両者の違いはどこにあるのでしょうか。

職業規制では、中間目的ではなく、究極目的を規制目的として捉えることになります。職業規制では、規制目的は、違憲審査基準の適用(目的審査)においてのみならず、違憲審査基準の定立過程においても、規制態様と並んで、裁判所が立法裁量を尊重するべき要請がどれだけあるのかを明らかにする要素として考慮されます。当該目的に基づく当該規制を支える立法事実について、裁判所においてどれだけ把握可能性があるのかを明らかにするために(把握可能性が低ければ、その分だけ、立法裁量尊重の要請が強く働く)、規制態様と規制目的を考慮しているわけです。そして、当該目的に基づく当該規制を支える立法事実について、裁判所においてどれだけ把握可能性があるのかは、究極目的を基準として判断するべきものです。だからこそ、職業規制では、究極目的を規制目的として捉えることになります。違憲審査基準の定立過程で規制目的も考慮されるという、特殊性によるものです。

これに対し、違憲審査基準の定立過程で規制目的の性質が考慮されない通常の領域(表現規制やプライバシー規制等)では、①中間目的を規制目的として捉える構成と、②究極目的を規制目的として捉える構成のいずれもあり得ます。規制目的の捉え方が違憲審査基準の厳格度に影響しないからです。「性犯罪者の継続監視⇒性犯罪の再犯の防止⇒性犯罪者の社会復帰の促進+地域社会の安全の確保の推進」という構造になっている平成28年司法試験の性犯罪者継続監視法を例に挙げると、①の構成では、「性犯罪の再犯の防止」を規制目的として捉えた上で、目的審査では「性犯罪の再犯の防止⇒性犯罪者の社会復帰の促進+地域社会の安全の確保の推進」という繋がり(社会復帰・安全確保に繋がるから、再犯防止という目的は必要不可欠だ・重要だということ)を、手段審査では適合性・必要性の有無として「性犯罪者の継続監視⇒性犯罪の再犯の防止」という繋がりを検討することになります。②の構成では、目的審査では「性犯罪者の社会復帰の促進+性犯罪から地域社会の安全を確保すること」の評価を、手段審査では適合性・必要性として「性犯罪者の継続監視⇒性犯罪の再犯の防止⇒性犯罪者の社会復帰の促進+地域社会の安全の確保の推進」という繋がりを検討することになります。私は、①のほうが書きやすいことと、問題文に中間目的である「性犯罪の再犯の防止」が何度も出てきていることから、①を採用しています。

2020年09月07日
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加藤ゼミナールは、加藤喬講師が代表を務める予備試験・司法試験のオンライン予備校です。

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加藤ゼミナール代表取締役
加藤 喬かとう たかし
加藤ゼミナール代表取締役
弁護士(第二東京弁護士会)
加藤ゼミナール代表
青山学院大学法学部 卒業
慶應義塾大学法科大学院(既修) 卒業
2014年 労働法1位・総合39位で司法試験合格
2021年 7年間の講師活動を経て、「法曹教育の機会均等」の実現と「真の合格実績」の追求を理念として加藤ゼミナールを設立
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