加藤喬の司法試験・予備試験対策ブログ

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表現内容規制と表現内容中立規制の違い

表現内容規制と表現内容中立規制について、定義は理解しているのですが、いざ問題を解いてみると、その規制が表現内容規制と表現内容中立規制のいずれに該当するのかが分からなくなることがあります。例えば、平成20年司法試験では、「有害情報」という表現内容に着目しているため表現内容規制であると思う一方で、インターネット上の表現であることに着目している側面もあるため表現内容中立規制ではないかとも思います。

赤坂正浩「憲法講義(人権)」初版21頁では、表現内容規制について、「国家が、情報をその内容によって選別し、特定の情報の流通を妨害する目的でおこなう・・規制」と定義した上で、「時・場所・方法の規制=表現内容規制と短絡的に考えてはならない。内容規制も、何らかの表現方法をターゲットとするのが普通だからである」とされています。芦部信喜「憲法学Ⅲ 人権各論(1)」増補版403頁では、表現内容規制について「規制目的がある表現の「伝達的効果」・・に関わる規制」と定義した上で、「ある表現を規制することによって除去しようとする害悪が・・表現の「伝達的効果」から生じる場合、その規制目的は表現内容に関わるものである」とされています。これらから、①ある内容の表現について、その伝達的効果から生じ得る害悪の除去を目的として規制する場合には、時・場所・方法の限定の有無にかかわらず、表現内容規制に当たる、②表現の伝達的効果とは無関係に専ら表現行為の時・場所・方法だけを規制する場合には、表現内容中立規制である、と整理することができます。

例えば、平成20年司法試験のフィルタリング・ソフト法は、インターネットにおける有害情報の表現を規制しているため、表現の内容と方法の双方に着目した規制であるといえます。こうした事案で、「表現の内容に着目していれば表現内容規制、表現の時・場所・方法に着目していれば表現内容中立規制」という区別の仕方をすると、当該規制がいずれに該当するのかについて正確に判断することができなくなります。上記①・②に従って判断すると、次の通りの説明になります。フィルタリング・ソフト法は、インターネット上で有害情報が流通することによる害悪(青少年の健全な育成が害される、有害情報を見たくない大人の利益が害されるという事態)を除去することを目的としている規制であるから、①に該当し、表現内容規制に位置づけられることになります。インターネットという表現手段に着目しているのは、インターネットという表現手段における有害情報の流通による害悪が他の表現手段に比べて大きいからなので、規制対象がインターネットという表現方法に限定されていることをもって「表現の伝達的効果とは無関係に専ら表現行為の・・方法だけを規制する場合」(②)であるとして表現内容中立規制に当たるということはできません。

2020年09月07日
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加藤ゼミナールは、加藤喬講師が代表を務める予備試験・司法試験のオンライン予備校です。

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加藤ゼミナール代表取締役
加藤 喬かとう たかし
加藤ゼミナール代表取締役
弁護士(第二東京弁護士会)
加藤ゼミナール代表
青山学院大学法学部 卒業
慶應義塾大学法科大学院(既修) 卒業
2014年 労働法1位・総合39位で司法試験合格
2021年 7年間の講師活動を経て、「法曹教育の機会均等」の実現と「真の合格実績」の追求を理念として加藤ゼミナールを設立
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