加藤喬の司法試験・予備試験対策ブログ

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危険負担に関する改正民法536条と567条の関係

お世話になっております。
売買契約において債権者の受領遅滞後に双方の帰責事由なく目的物が滅失した場合、債権者は代金支払いを拒めない、というのが改正民法で規定されたかと思います。(H30司法試験設問1のようなケースを想定しています)
その際、根拠条文としては413条の2第2項+536条2項前段とすべきか、端的に567条2項のみ摘示すれば良いのか混乱しております。試験的にはどのように答案に記載すべきなのでしょうか?

まず、受領遅滞が絡まない事案では、①「引き渡しがあった時以後」における「滅失」「損傷」の場合には567条1項が適用される一方で、②引渡前における履行不能の場合には536条が適用されます。

次に、③受領遅滞中の滅失(引渡債務の履行不能)の事案では、形式上、「413条の2第1項+536条2項」と「567条2項」とが競合することになります。

この点について、㋐「民法(債権関係)改正法の概要」(著:潮見佳男)271頁では、「567…条2項が想定している場面の多く(受領遅滞中の履行不能に対して与えられる意味の解釈次第ではすべて)は、受領遅滞中の履行不能に関して民法413条の2第2項に該当するため、その履行不能は「債権者の責めに帰すべき事由」によって生じたものとみなされる結果、本条2項の規定する内容は、確認規定にきわめて近いものとなっている。」と説明されています。つまり、「413条の2第1項+536条2項」と「567条2項」が競合する場合には前者が優先的に適用されるとの考えを前提として、「567条2項」が適用される場面は(ほぼ)ないと考えるわけです。

他方で、㋑「Before/After  民法改正」(著:潮見・北居ほか)109頁(担当:坂口甲)では、工場建物の建築請負において注文者側が自らの責任に属する建物補強を怠っていたために工事が途中で停止し、その間に不可抗力により工場建物が滅失した事案について、「新567条2項は、買主の協力行為のうち、目的物の引渡しにおける買主の受取りに焦点を当てた規定である。したがって、物の受取り以外の協力行為が問題となっているCaseには、同条2項ではなく、新413条の2第2項・536条2項が適用されると解すべきである。」と説明されています。

㋐は潮見先生の説明ですから、こっちを採用した方が良いと思います。したがって、平成30年司法試験設問1の事案では、「413条の2第1項+536条2項」を適用することになります。

2023年06月21日
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加藤ゼミナールは、加藤喬講師が代表を務める予備試験・司法試験のオンライン予備校です。

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加藤ゼミナール代表取締役
加藤 喬かとう たかし
加藤ゼミナール代表取締役
弁護士(第二東京弁護士会)
加藤ゼミナール代表
青山学院大学法学部 卒業
慶應義塾大学法科大学院(既修) 卒業
2014年 労働法1位・総合39位で司法試験合格
2021年 7年間の講師活動を経て、「法曹教育の機会均等」の実現と「真の合格実績」の追求を理念として加藤ゼミナールを設立
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