加藤喬の司法試験・予備試験対策ブログ

質問コーナー

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不法原因給付物を客体とする盗品等関与罪の成否

大変お世話になっております。不法原因給付と盗品等に関する罪について質問させていただきます。
保護法益を追及権と捉えて、不法原因給付については追及権が存在しないため盗品等に関する罪は成立しないという記述もあれば、本質を追及権に加えて本犯助長的な部分にも求めて、盗品等に関する罪が成立するという見解も目にします。
短答式試験、論文式試験では、それぞれどちらの説に立つべきなどありますでしょうか。
何卒よろしくお願いいたします。

不法原因給付物を客体とする盗品等関与罪(刑法256条)の成否については、①不法原因給付物を客体とする前提犯罪(詐欺罪、恐喝罪、横領罪)の成否(256条1項でいう「財産に対する罪に当たる行為」の成否)、②盗品等関与罪の保護法益論との関係(256条1項でいう「物」への該当性)に分けて考え、論文試験では①→②の流れ論じます。

まず、①前提犯罪の成立が否定されれば、「…財産に対する罪に当たる行為によって領得された物」に当たらないため、盗品等関与罪の保護法益論に入るまでもなく、盗品等関与罪不成立という結論になります。

次に、②前提犯罪の成立が肯定されても、不法原因給付物については民法708条本文類推適用により給付者の物権的返還請求権が否定されることの反射的効果としてその所有権が受給者に移転すると解されるという理由から、被害者の追求権侵害が認められないため、追求権説からは「物」に当たらないとして盗品等関与罪の成立が否定されます(但し、民法708条但書の適用がある場合には、給付者による物権的返還請求権が可能であり、反射的な所有権移転も生じないため、盗品等関与罪が成立します。)。これに対し、新しい違法状態説や物的庇護説からは、盗品等関与罪の成立が認められます(以上につき、山口厚「刑法各論」第2版342頁、大塚裕史ほか「基本刑法Ⅱ」第2版349~350頁、高橋則夫「刑法各論」第3版434頁)。

②について、2項の盗品等関与罪の法定刑を追求権侵害+本犯助長性・事後従犯性の2点から説明する見解(山口厚「刑法各論」第2版338頁)に立っても、不法原因給付物について民法708条本文類推適用により反射的に所有権移転が生じると理解する以上、盗品等関与罪の成立を認めることはできないことに注意する必要があります。あくまでも2項の盗品等関与罪の処罰根拠を「追求権侵害+本犯助長性・事後従犯性」の2点に求めるのですから(この点で、物的庇護説とは異なります)、「追求権侵害」が認められない以上、「本犯助長性・事後従犯性」が認められても処罰根拠を満たさないため、盗品等関与罪の成立を認めることはできません。

判例は、盗品等関与罪の保護法益論について追求権説を採用しており、かつ、不法原因給付物の所有権の帰属については民法708条本文類推適用により反射的に受給者に移転するという立場(最大判S45.10.21)ですから、短答・論文とも盗品等関与罪の成立を否定する見解を採用することになります。

参考にして頂けますと幸いです。

2023年05月03日
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加藤ゼミナールは、加藤喬講師が代表を務める予備試験・司法試験のオンライン予備校です。

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加藤ゼミナール代表取締役
加藤 喬かとう たかし
加藤ゼミナール代表取締役
弁護士(第二東京弁護士会)
加藤ゼミナール代表
青山学院大学法学部 卒業
慶應義塾大学法科大学院(既修) 卒業
2014年 労働法1位・総合39位で司法試験合格
2021年 7年間の講師活動を経て、「法曹教育の機会均等」の実現と「真の合格実績」の追求を理念として加藤ゼミナールを設立
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