加藤喬の司法試験・予備試験対策ブログ

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判例の独立燃焼説における「焼損」の意義

非常に細かい所ですが、放火罪における「焼損」の当てはめで少し迷いがあります。
判例では、天井板1尺(30センチ)四方に燃え広がった事実から、「焼損」に当たるとされております。
他方、基礎問題演習講座第65問では、床板10センチ四方に燃え広がったところで自然に消えたという問題文で、参考答案では「焼損」したという記述になっておりました。
自分の答案では、自然に消えてしまったという事実を使わないと不味いと思ったこと、判例の事案を覚えていたこともあり、焼損したという認定はしませんでした。
焼損したという点についてのメルクマールがあれば教えていただきたいです。
よろしくお願いいたします。

判例の独立燃焼説の立場からは、「その火は、木製の床板に燃え移り、同床板が燃え始め…、その燃え移った火は、同床板の表面の約10センチメートル四方まで燃え広がった」時点で、火が媒介物を離れて目的物に燃え移り、目的物が独立して燃焼を継続する状態に達したといえ、「焼損」が認められます。

判例の独立燃焼説に対しては、既遂時期が早すぎるとの批判があり、学説には、こうした批判を踏まえて、「独立燃焼開始後、ある程度の燃焼継続可能性を要求すべきであろう。」として、独立燃焼説を維持ししつつ「焼損」の意義を判例の独立燃焼説よりも限定的に捉える見解があります(山口各論第2版385頁等)。

この学説の立場からは、「その燃え移った火は、同床板の表面の約10センチメートル四方まで燃え広がったところで自然に消えた。」という事実に着目して、「ある程度の燃焼継続可能性」を欠くとして「焼損」を否定する余地があります。

2023年02月25日
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加藤ゼミナールは、加藤喬講師が代表を務める予備試験・司法試験のオンライン予備校です。

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加藤ゼミナール代表取締役
加藤 喬かとう たかし
加藤ゼミナール代表取締役
弁護士(第二東京弁護士会)
加藤ゼミナール代表
青山学院大学法学部 卒業
慶應義塾大学法科大学院(既修) 卒業
2014年 労働法1位・総合39位で司法試験合格
2021年 7年間の講師活動を経て、「法曹教育の機会均等」の実現と「真の合格実績」の追求を理念として加藤ゼミナールを設立
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