加藤喬の司法試験・予備試験対策ブログ

「公訴事実の同一性」の判断における単一性と狭義の同一性の関係

0

「公訴事実の同一性」(刑訴法312条1項)は、単一性と同一性の双方を満たすことを必要とする概念ではありません。

新訴因が旧訴因と犯罪として両立し得るものとして主張されている場合には【単一性】により判断し両立し得ないものとして主張されている場合には【狭義の同一性』により判断します

例えば、検察官が被告人を住居侵入罪で起訴した後に、侵入先の住居内で窃盗も行っていたとして窃盗罪でも起訴するために訴因に窃盗を追加する場合(これは、狭義の「追加」ですが、広義では「変更」です)には、【単一性】が問題となり、両者は牽連犯(刑法54条1項前段)として実体法上科刑上一罪となりますから、単一性、ひいては訴因の追加が認められることになります。

だからこそ、常習犯事案における一事不再理効の客観的範囲では、単一性の判断基準が問題となっているわけです(最三小決平成15.10.7・百95)

これに対し、検察官が被告人を犯行日時を令和5年10月30日とするVに対する殺人罪で起訴した後に、犯行日時を令和5年10月29日に変更するために訴因を変更しようとする場合(これは、狭義の「変更」です)には、【狭義の同一性】が問題となります。

これが分かると、同一性判断にける非両立性の基準の使い方もイメージできるようになります。

講義のご紹介
もっと見る
法律コラムに関するご質問は、質問コーナーではなく、当該コラムのコメント欄に投稿して頂きますようお願いいたします。

コメントする

コメントを残す

コメントをするには会員登録(無料)が必要です
※スパムコメントを防ぐため、コメントの掲載には管理者の承認が行われます。
※記事が削除された場合も、投稿したコメントは削除されます。ご了承ください。

加藤ゼミナールは、加藤喬講師が代表を務める予備試験・司法試験のオンライン予備校です。

kato portrait
加藤ゼミナール代表取締役
加藤 喬かとう たかし
加藤ゼミナール代表取締役
弁護士(第二東京弁護士会)
加藤ゼミナール代表
青山学院大学法学部 卒業
慶應義塾大学法科大学院(既修) 卒業
2014年 労働法1位・総合39位で司法試験合格
2021年 7年間の講師活動を経て、「法曹教育の機会均等」の実現と「真の合格実績」の追求を理念として加藤ゼミナールを設立
質問コーナーのカテゴリ
ブログ記事のカテゴリ