加藤喬の司法試験・予備試験対策ブログ

これから法曹になる皆様へ

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74期司法修習生として二回試験を終えた皆様、司法試験合格までの勉強、司法修習、二回試験、本当にお疲れ様でした。

これから法曹として活躍なさる皆様に、私からお話したいことがございます。

1.進路選択の正解は1つではない

多くの方々が、所属先も含めて第一次的な進路が決まっていると思いますが、これから仕事をしながら今後の進路について悩むこともあると思います。

進路選択における正解は人ごとに異なります。

自分にとってのベストな選択が、業界の多数派のイメージと一致する人もいれば、一致しない人もいます。

司法試験合格者というグループに属する人たちにも、個々の人格があり、得手不得手も人生観も人ごとに異なります。

お金を稼ぐことが当面の最優先事項である人もいれば、そうでない人もいますし、お金を稼ぐためのベストな方法も人ごとに異なります。

どんな仕事をするのか、どんな人たちとどんな場所で仕事をするのか、1週間のうちどれくらい仕事に使うのか、弁護士として独立するのか、法曹以外の仕事を(も)やるのかといったことについても、ベストな選択は人ごとに異なります。

業界の多数派のイメージを無視しろとまでは言いませんが、多数派のイメージに流されることなく、自分が納得できる道に進んでほしいと思います。

さらに言えば、自分にとってのベストな選択も1つではないと思っています。結局は、人生の主人公である自分がどう思えるかなので、「これで良かった」と自分が満足できるような生き方と考え方をすることができるかが重要なのだと思います。

2.自分も一個の人格を持った一人の人間であることを忘れない

ちょっとネガティブな話になりますが、大事なことなので、お話しいたします。

法曹として仕事をする方々の多くは、期日等に追われる生活を送ることになります。

私は、自分では弁護士業務はほとんどやっていませんが、大量の事件を抱えている弁護修習先の先生が期日等に追われる姿を数カ月間見ましたし、長年にわたり弁護士である祖父・父・姉を見て弁護士の独特の忙さを痛感しています。

顧問先や手持ち事件が増えるにつれて、数か月後までスケジュール帳がびっしりと埋まるようになります。ボランティア的な仕事もやるのであれば、もっと忙しくなります。

誰かのために、社会のためにという志をもって仕事をすることは、とても素晴らしく、尊いことです。

ですがその一方で、自分も一個の人格を持った一人の人間であることを忘れないでほしいです。

最初は難しいかもしれませんが、法曹としての自分と人間としての自分のバランスを取れるようになってほしいと思います。

極端な働き方をすると、本当に、あっという間に時間が過ぎていきます。

3.今やっていること・やろうとしていることを今後も持続できるかを考える

法曹に限らず、仕事で経験を積むにつれて、自分がプレイヤーとして出来ることの幅が広がるとともに、こなせる仕事量も増えていきます。

初めのうちは、成長を実感することができるし、収入も増えるでしょうから、嬉しいと思います。

その一方で、やり方を工夫・改善しなければ、今やっていることやこれからやろうとしていることを今後も持続することが困難になるという時期がやってきます。

可処分時間と体力には限界があるからです。

初めのうちは経験を積むために仕事をこなすことに集中することになるのでしょうが、その一方で、今やっていること・やろうとしていることを安定して持続させるための工夫等についても考てみるといいと思います。

4.依頼者をはじめとする非法曹との間に知識・経験の格差があることは当然です

依頼者をはじめとする非法曹との間には、当然、法的な知識・経験について格差があります。

皆さんと他の専門職・専門家との関係でも、同様です。

皆さんは、法律をはじめとして自分がこれまで勉強してきたことについてはそれなりの知識・経験を持っていますが、そうでない事柄については素人とさほど変わりません。

法律に詳しくない人が初歩的なことで間違ったことを言っているのを見ても、馬鹿にしないで下さい。

他の専門分野の方々から見たら、法曹も、ある分野では素人同然です。

各人が自分の得意・専門とする仕事をしているからこそ、これだけ複雑な社会が成り立っています。

誰しもが、他者による支えのおかげで、生活、仕事をすることができています。

そのことを決して忘れないでください。

法曹だから他の職業の方々に比べて偉いだなんてことは、決してありません。

他の職業の方々と同じです。

優しさと謙虚さを、忘れないでほしいと思います。

5.情報の非対称性がネガティブの妄想を引き起こす

情報の非対称性ゆえに、依頼者がネガティブな妄想をして突っかかってくるということがあります。

私も、毎日のようにエンジニアやウェブデザイナーとやり取りをしていると、たまに、脳内で、ネガティブな妄想というか決めつけに近いことをしそうになります。

人によって程度差はありますが、情報の非対称性があると、そうなってしまいがちです。

ご自身の安全や経済的利益も大事ですが、ある程度は寛容になって頂きたいと思います。

決して、Twitterでネタにするような下賤極まりない素行には及ばないでください。

また、依頼者がネガティブな妄想を抱かないように、適時適切な説明をするという工夫も大事だと思います。

6.経営をする上で大事なこと

たまに、「経営の勉強がしたい」、「そのために○○事務所に入る」といったことを口にしている方を見かけます。

目標に向かって学ぼうとする姿勢は素晴らしいものですし、経営をする前に経営の勉強をするというやり方が的外れだとまでは言えません。

もっとも、私は、中小規模の経営においては、小手先のビジネス上の知識やテクニックみたいなことよりも、実際にやってみる度胸、経営をする過程で必要なことを学び吸収すること、立ち居振る舞い、信用、プレイヤーとしての実績といったことのほうが遥かに大事だと思います。これに加えて、攻める姿勢と臆病であることのバランスが保たれていることも大事だと思います。

まず、経営の勉強がしたいから大規模な新興系事務所に入るというのは、目的と手段がずれているように思えます。皆さんが独立や起業をする際には、基本的にスモールビジネスからスタートするわけですから、規模の大きい新興系事務所の”今のやり方”を見るだけではあまり意味がないと思います。

それに、経営のやり方は、本人の個性、資金力、時代、地域、業種などによって異なるので、取りあえず勇気をもって経営をスタートしてみて、経営をする過程で必要なことを学び吸収していくということになるはずです。その過程で分からないことがあれば、信用できる他人に頼ればいいわけです。

次に、中小規模の経営をするということは、自分が事務所や会社の看板になるということですから、対内的にも対外的にも、人間としての信用、プレイヤーとしての実績、立ち居振る舞いが大事になってきます。企業そのもののブランドで成り立っている大企業とは違うわけです。

その一環として、TwitterをはじめとするSNSでの発言には、本当に気を付けたほうがいいと思います。内容は勿論のこと、言葉遣いもです。

例えば、Twitterにおいて、面白半分で同業者や素人を袋叩きにする、さほど実益のない議論や感情的な議論を展開する、ネガティブなtweetをする、リプライや引用リツイートで丁寧語すら使わない・横柄な態度を取るなどは、マイナスでしかありません。一時的な感情を優先した結果、それよりも遥かに大事なものを失っています。

要するに、表面的な知識やテクニックだけを身につけてどうにかなるものではないということです。

真面目にコツコツとやる、人を大切にする、プレイヤーとしての実績と経験を積む上げていくという、地道なやり方が一番だと、個人的には思います。

これから法曹として活躍なさる皆様にとって、少しでも参考になればと思い、本記事を書かせていただきました。

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加藤ゼミナールは、加藤喬講師が代表を務める予備試験・司法試験のオンライン予備校です。

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加藤ゼミナール代表取締役
加藤 喬かとう たかし
加藤ゼミナール代表取締役
弁護士(第二東京弁護士会)
加藤ゼミナール代表
青山学院大学法学部 卒業
慶應義塾大学法科大学院(既修) 卒業
2014年 労働法1位・総合39位で司法試験合格
2021年 7年間の講師活動を経て、「法曹教育の機会均等」の実現と「真の合格実績」の追求を理念として加藤ゼミナールを設立
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