宍戸・曽我部「憲法演習サブノート」(弘文堂)の使い方についてご質問をいただきましたので、私なりの考えを書かせて頂きます。
ざっと目を通してみましたが、この解説では、答案の最初から最後に至るまでの過程、すなわち、答案全体の流れや答案で使うべき判断枠組みを把握することは難しいです。
憲法の論文対策として大事なことは、以下の3つです。
①「保障→制約→違憲審査基準の定立(主として人権の重要性と制約の態様を考慮)→目的手段審査による当てはめ」という違憲審査の基本形をはじめとする「事案類型ごとの違憲審査枠組み」を身につける
②事案類型ごとに違憲審査枠組みで照らしながら問題文を読み、判例学説・問題文のヒント・その場で考えたことを選択した違憲審査枠組みという「答案の骨格」に肉付けする
③問題文のヒントに従って何をどう論じるべきかを判断する読解のコツ
これらのうち、市販演習書から習得可能なことは①ですが、憲法演習サブノート210問の解説では①を身につけるのは難しいです。
憲法の演習材料としては、司法試験過去問と予備試験過去問だけで足りると考えます。
もっとも、同書の解説では、当該事案における争点、当てはめの視点、判例学説の理解について、宍戸常寿教授(現考査委員)・曽我部真裕教授(元考査委員)をはじめとする著名な先生の見解が示されているので、読み物としては参考になる記述が少なくないと思います。
そこで、演習材料としてはあまり有用ではないが、読み物としては参照するのはあり、と考えます。
なお、これは多くの市販演習書について言えることですが、著名な先生の演習書であっても、答案の流れや問題文の読み方が示されていない解説を読むだけでは、事案類型ごとの答案の流れ(憲法なら違憲審査枠組み)や条文論点の抽出方法は身につきませんから、答案を書けるようにはなりません。適当に答案構成をして解説を読んでいるだけで自然と答案を書けるようになるわけではありませんから、勉強をやったつもりになってしまわないよう、気をつける必要があります。
そのことを踏まえて、市販演習書を何のためにどう使うのかについて、ちゃんと考える必要があります
参考にして頂けますと幸いです。
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