加藤喬の司法試験・予備試験対策ブログ

判例の規範を修正することの適否

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論文試験で判例の規範を修正することの可否について質問を頂いたので、私の考えを紹介いたします。

私は、①判例の規範がそのままの形で妥当する事案(個別の事案のみならず、事案類型も含みます。以下同じ。)であれば、判例の規範をそのままの形で使うべきあるが、②判例の規範がそのままの形で妥当しない事案であれば、事案に合わせる形で(=当該事案の当てはめをし易い形に)判例の規範を修正するべきであると考えています。

判例の規範は絶対的なものではなく、事案に応じて変容し得るものです。判例の規範の中には、当該事案を前提としたものが少なからずあるため、判例が想定していない事案との関係では判例の規範をそのままの形で使うことができないこともあるからです。

かなり稀ではありますが、②に属する出題もあります。特に憲法では、判例の規範において想定されている事案が他科目のそれに比べて狭いため、他科目に比べて判例の規範を当該事案に合わせて修正する機会が多くなります。

また、仮に①に属する出題であったとしても、正しい理由付け(条文の趣旨、原理原則など)から修正した規範を導き、事案と規範に適合した当てはめをすることができているのであれば、判例の規範を修正してしまっても、ぎりぎり合格水準に到達すると思います。

例えば、令和3年予備試験設問1における「2つ以上の契約の一方の債務不履行を理由とする契約全部の解除の可否」という論点における本質は、㋐債務不履行により契約を維持する意味を失った債権者を契約の拘束力から解放するという債務不履行解除の制度趣旨を前提として、㋑「2つ以上の契約の一方だけに債務不履行がある場合に、債権者が他方の契約も含めて契約を維持する意味を失ったといえるのためには、どういった条件を満たす必要があるか」という点にありますから、判例の規範をそのままの形で使っていなくても、規範と当てはめに㋑が反映されているのであれば、合格水準に到達すると思います。

とはいえ、②に属する出題は稀ですから、普段の答案練習では、安易に判例の規範を修正するのではなく、なるべく、①に属する出題であることを前提として、判例の規範を前提として事案に適合した当てはめをする訓練をするのがいいと思います。

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加藤ゼミナールは、加藤喬講師が代表を務める予備試験・司法試験のオンライン予備校です。

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加藤ゼミナール代表取締役
加藤 喬かとう たかし
加藤ゼミナール代表取締役
弁護士(第二東京弁護士会)
加藤ゼミナール代表
青山学院大学法学部 卒業
慶應義塾大学法科大学院(既修) 卒業
2014年 労働法1位・総合39位で司法試験合格
2021年 7年間の講師活動を経て、「法曹教育の機会均等」の実現と「真の合格実績」の追求を理念として加藤ゼミナールを設立
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