加藤喬の司法試験・予備試験対策ブログ

憲法論文の対策として最低限守るべきこと

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令和3年司法試験まであと2週間を切りました。

憲法論文の対策として、ここだけでは最低限守ってほしいことについて、簡単に紹介いたします。


1つ目は、何についてどう論じるべきかについて、問題文のヒントに従って判断するということです。

年々、被侵害権利として取り上げるべき人権、規制ごとの規制目的、規制の仕組み(何のために、何を、どう規制するのか)、規制の問題点について、問題文で分かりやすく誘導してくれる傾向が強くなっています。

その分、人権選択から目的手段審査による当てはめに至るまで、何についてどう論じるべきかについて、問題文のヒントに従って決める必要があります。

ここでは、法律知識や読解力ではなく、問題文に対する姿勢が大事です。

2つ目は、「自己の見解と異なる立場」に言及する方法です。

「自己の見解と異なる立場」に言及する際、「反論」という構成で書く必要がないとともに、「反論」という言葉を出す必要もありません。

「自己の見解と異なる立場」に言及するという出題形式において求められているのは、「自説を中心に記述を展開する中で、必要な限度で他説に触れつつ、批判的検討を加えていくという書き方」(令和2年司法試験・採点実感)です。

なので、「自己の見解と異なる立場」については、例えば、「確かに…(自己の見解と異なる立場)。しかし…(自説)」という流れの中で言及すれば足ります。「反論」という構成で書こうとすると、先に「反論」の対象となる自説を書かなければいけないため、「自説→反論→自説」という流れで書くことになってしまいます。

勿論、論点によっては「自説→自己の見解と異なる立場→自説」という流れで論じた方が書きやすいものもありますが、必ずしも自己の見解と異なる立場に自説を先行させる必要はありません。

この意味で、採点実感において「何が自説なのかが明確に示されていない段階で先に反論を指摘しているため何に対する反論なのかが不明確な答案…もあり,構成段階での検討が不十分なのではないか、と思われた。」との指摘がある令和1年司法試験とは異なります。

また、「反論」という言葉も使わなくていいですし、さらに言うと、「自己の見解と異なる立場→自説」という流れで書く場合に反論という「自己の見解と異なる立場」のことで「反論」という言葉を使うと、反論の対象が表れていない段階で反論を書いているというおかしな文章構成になってしまいます。

自説を中心に論じる過程で、他の考え方もあり得る事柄については、他の考え方を示した上でそれに対する批判的検討を自説として論じてほしいというのが、出題者側の考えです。

こうした考えを明確にするために、令和2年司法試験の設問では、反論という言葉は一切なくなり、「その際には、必要に応じて、参考とすべき判例や自己の見解と異なる立場に言及すること。」という形式に変更されたわけです。

3つ目は、平成30年以降の出題形式では、平成29年までの三者間形式と異なり、「自己の見解と異なる立場」を採用することはあり得ないということです。

「自己の見解と異なる立場」とは、その文字通り、自己の見解(自説)と異なる立場だからです。

このことは、「反論として書き始めたものを結論において自説としてしまう答案もあり、構成段階での検討が不十分なのではないか、と思われた。」として、令和1年司法試験の採点実感でも指摘されています。指摘されています。

4つ目は、「保障→制約→人権の性質や規制の態様等を考慮して違憲審査基準を定立→目的手段審査(当てはめ)」という違憲審査の基本的な枠組みについて、深く正確な知識を身に付けておくということです。

例えば、違憲審査基準の定立過程では「規制の態様」としてどこまでのことを考慮していいのか、違憲審査基準の定立過程で考慮することができない規制の態様は違憲審査の枠組みの中のどこで論じる余地があるのか、厳格度の異なる違憲審査基準ごとの目的審査・手段審査の中身などについてまで、ちゃんと理解しておく必要があります。

判例・学説の勉強は、その後です。

5つ目は、判例に言及する方法です。

まず、判例の事件名にも配点があります。例えば、「判例に言及する場合には、単に事件名や結論を提示するのみでは十分とは言い難い。」とする平成23年司法試験の採点実感、「本設問のように当然言及してしかるべき関連判例が存在する事案については、当該判例を明示し、その論旨を踏まえて自らの見解を示すことは必須である。」とする令和2年司法試験の採点実感からも、事件名にも配点があることが窺われます。

しかし、事件名に対する配点は微々たるものですから、答案に書くこととしての優先順位は低いです。

したがって、無理をしてまで書く必要はありませんし、無理をしてまで記憶する必要もありません。

次に、「判例は…」として判例を主語にして論じることすらも、合格水準としては不要です。

採点者から見て、「答案のこの部分は、あの判例のあの考え方を参考にしている」と判断できるのであれば、十分、評価されます。

そして、大部分の受験生は判例理論についてそこまで深いこと・正確なことに言及することはできませんから、例えば、薬事法判決が狭義の職業選択の自由に対する制約を認めた部分についてであれば、「形式的には職業遂行の自由に対する制約にとどまる規制も、実質的には狭義の職業選択の自由に対する制約と評価されることがある」とだけ書けば足ります。

論理が飛躍したり、説明が不正確なっても構いませんから、要するにこういうことだということを一文で説明できるようにしておくことが大事です。

ちなみに、「形式的には職業遂行の自由に対する制約にとどまる規制も、実質的には狭義の職業選択の自由に対する制約と評価されることがある」ということを脳内でイメージできることと、答案に文章として書くこととの間には、ギャップがあります。

理解力や文章力が高ければ、上記のギャップは極めて小さいのですが、理解力や文章力が低ければ、その分だけ、上記のギャップが大きくなります。

後者のタイプであれば、判例理論を理解・記憶するだけでなく、判例理論が反映された文章まで、ある程度カチッと記憶しておく必要があります。

なお、判例に言及することができていなくても、合格水準に到達することは可能であり、まずは上記1つ目から4つ目と、人権の定義、人権の保障内容、人権の保障の趣旨といった判例学説以前の教科書知識を優先しましょう。

6つ目は、論述において憲法的視点が抜けないように気を付けるということです。

法令の合憲性を違憲審査基準論に従って論じる場合には特に気にしなくていいのですが、法令の合憲性を違憲審査基準論以外で論じる場合や適用違憲(処分違憲)には気を付ける必要があります。

特に適用違憲(処分違憲)では、法律の文言と趣旨だけに着目するという論述だと、憲法的視点が伴わない行政法レベルでの論述にとどまることになってしまいますから、気を付けましょう。

 

以上が、憲法論文の対策として最低限守ってほしいことです。

司法試験受験生だけでなく、予備試験受験生の方々にも参考にして頂きたいと思います。

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加藤ゼミナールは、加藤喬講師が代表を務める予備試験・司法試験のオンライン予備校です。

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加藤ゼミナール代表取締役
加藤 喬かとう たかし
加藤ゼミナール代表取締役
弁護士(第二東京弁護士会)
加藤ゼミナール代表
青山学院大学法学部 卒業
慶應義塾大学法科大学院(既修) 卒業
2014年 労働法1位・総合39位で司法試験合格
2021年 7年間の講師活動を経て、「法曹教育の機会均等」の実現と「真の合格実績」の追求を理念として加藤ゼミナールを設立
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