令和2年司法試験の再現答案を成績表と比較しながら分析したところ、合否を分けた一番の原因は、「基本的な条文・定義、典型論点の論証の正確性」であることが分かりました。
確かに、現場思考問題への対応力、読解力・思考力・文章力、科目特性に応じた書き方なども、合否及び順位に影響を及ぼしています。
しかし、これらの水準が低くても、「基本的な条文」について正しく適用し、「基本的な定義、典型論点の論証」についてそこそこ正確に書くことができれば、合格ラインに到達します。
逆に、「基本的な条文・定義、典型論点の論証」について的外れなことを連発している答案は、「現場思考問題への対応力、読解力・思考力・文章力、科目特性に応じた書き方」を身に付けていたとしても、合格ラインに到達しません。
例えば、不合格者の答案の中には、憲法で、3度目の出題である職業規制(平成18年も含めると4度目)について、薬事法判決を無視して人権の性質と規制の態様だけから違憲審査基準を定立したり、違憲審査基準論に立っているにもかかわらず目的審査と手段審査の厳格度がずれているものも少なくありませんでした。
行政法設問1(2)では、相当期間の期間について不作為の違法確認訴訟の訴訟要件として書いてしまっているものや、標準処理期間と相当期間の関係に関する論証に言及することができていないものが本当に多かったです。
民法設問3では、問われている3つの論点のうち、「日常の家事」に関する法律行為の定義すら書けていない答案や、110条の趣旨の類推適用に関する論証を書けていない答案(そもそも言及できていない、善意無過失の対象が代理権の存否になっているなど)も多かったです。
商法設問1では、会社の組織に関する行為についての株主総会決議の取消しの訴えが同行為の効力発生後には同行為の無効の訴えに吸収されるとする吸収説を知らないために株主総会特別決議の取消しの訴えについて大展開している答案や、非公開会社では株主総会特別決議を経ていないことが株式発行の無効原因になると解されていること(最高裁平成24年判決)に一切言及していない答案も多かったです。
刑事訴訟法では、設問1について、平成26年司法試験で出題されて出題趣旨・採点実感において司法試験委員会が正解と考える判断枠組みが示されているにもかかわらず、そこから大きく逸脱する判断枠組みを展開する答案が多かったです。
設問3における類似事実証拠による犯人性立証については、令和2年司法試験の出題のヤマであったにもかかわらず、悪性格立証を媒介とする推認過程と顕著な事実が相当程度類似することを間接事実とする推認過程の双方に言及できていない答案、悪性格立証を媒介とする推認過程を否定する理由として「二段階の推認過程であるから認められない」というおかしな説明をする一方で「実証的根拠に乏しい人格的評価を伴う…」という決定的に重要な理由付けがない答案、犯人性立証が許容される条件として「顕著な特徴が相当程度類似」という決定に重要な規範を書いていない答案などが、驚くほど多かったです。
類似事実証拠による犯人性立証であれば、せめて、「類似事実証拠による悪性格立証を媒介とした犯人性の証明は、実証的根拠に乏しい人格的評価を伴うから、許されない。しかし、類似事実と被告事件とで顕著な特徴が相当程度類似するのであれば、犯人性を証明できる」くらいの論証は書けなければいけません(後者の推認過程を支える経験則に言及しなくても、合格水準です)。
こうした答案を書いている方の多くは、インプットの繰り返しが少ないために「知覚→記憶」の過程で誤りが生じてしまっているのですが、中には、間違った論証を記憶しており「知覚」の対象が不正確であるという方もいます。
前者の方は、とにかくインプット面を強化して、「基本的な条文・定義、典型論点の論証」についてそこそこ正確に書けるようになりましょう。
後者の方は、少なくとも司法試験過去問で出題された典型論点について的外れな論証・判断枠組みを書くことにならないよう、出題趣旨・採点実感で司法試験委員会が求めている論証や判断枠組みを確認しましょう。秒速・総まくり2021、秒速・過去問攻略講座2021、令和3年合格目標加藤ゼミを受講されている方は、同講座・ゼミのテキスト・論証集に合わせたインプットをしましょう。
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