加藤喬の司法試験・予備試験対策ブログ

伊藤塾の入門講座では、法科大学院の学内試験や司法試験に対応できないのか?

2年くらい前にASK.fmで頂いたご質問に対する回答です。

本ブログの「質問コーナー」に質疑応答の内容を反映していますが、記事でも紹介させて頂きます。

以下が、私の考えです。

伊藤塾の入門講座について


昔から、「伊藤塾入門講座では法科大学院の学内試験や司法試験に対応できないのでしょうか。」といった質問を頂くことがあります。 私は今でも、伊藤塾の入門講座はとても質が高いと思っています。

今の伊藤塾体系マスターや基礎マスターのサンプル動画、伊藤真塾長のガイダンス動画等を拝聴していてもそう思いますし、伊藤真塾長の動画でも言及されている予備試験合格者に占める伊藤塾入門講座利用者の多さからもそういえます。

確かに、特定の科目・分野・論点という単位では、書き方、学説の選択と理解、判例の理解等について、伊藤塾の入門講座で学習したことを修正する必要があることもあります。

しかし、入門講座の最大の役割は、科目相互の関係性、科目の全体像(体系)、基礎的な知識、論文試験で必要とされる頭の使い方、文章の書き方といった、受講生が入門講座終了後に学習を進める際の土台となる基礎を身につけるということにもあります。

予備校の入門講座で重視するべきは、「科目相互の関係性、科目の全体像(体系)、基礎的な知識、論文試験で必要とされる頭の使い方、文章の書き方」と、「全体的な説明の分かりやすさ」です。この2点により、しっかりと基礎固めすることができる入門講座を選ぶべきです。

表面的な安さ、表面的なカリキュラムのシンプルさ、判例・学説レベルの情報の新しさに惑わされてはいけません。特に、判例・学説レベルの情報のブラッシュアップは、入門講座を終えた段階の、中上級者向け講座、短文事例問題演習、過去問演習を通じて自然とやることですから、入門講座の段階では気にしなくてもいいと思います。

基礎固めを疎かにすると、頭の使い方が分からない・体系的理解が不十分である等の理由から論点に気が付けない、論文試験で必要とされる文章作成の作法が身についていないから法的三段論法に従って書けない・文章全体が読みにくいなどにより、論点学習・答案練習の段階で伸び悩みます。

どの入門講座を受講していたか、さらには、入門講座をどれだけ真剣に受講していたかで、自学習の効果も、他校の中上級者向けの講座を使った学習の効果も、法科大学院での学習の効果も、だいぶ変わってきます。

伊藤塾の入門講座で法科大学院の学内試験に対応することができるか


繰り返しになりますが、入門講座の段階で最も大事なことは、「科目相互の関係性、科目の全体像(体系)、基本的な知識、論文試験で必要とされる頭の使い方、文章の書き方といった、受講生が入門講座終了後に学習を進める際の土台となる基礎を身につけること」にあります。

伊藤塾の入門講座については、たまに「内容が古い」といった批判を目にすることがあり、実際に今でも「内容が古い」箇所があるのだと思いますが、「基礎固めを優先するために、敢えて、難しいこと・深いこと・最新のことを無視することがある」のだと割り切って考えましょう。実際に、こうした教育的配慮により敢えて「古い内容」のままで説明をしているのかは定かでありませんが、このように割り切ったほうが良いです。

法科大学院の教授が独特な学説や判例理解を押し付けるという授業内容でない限り、伊藤塾の入門講座の教材をベースにして頂いて問題ありません。

入門講座と法科大学院の授業とで主に何が違ってくるのかというと、「深さ」です。

入門講座で学んだことと「違うことを学ぶ」というのではなく、入門講座で学んだことを「より深く学ぶ」、という捉え方が正しいです。

科目や論点によっては、見解そのものが変わることもありますが、それは(ごく)一部です(但し、憲法については、理解を変更するべき箇所が多いと思います)。

これから法科大学院に入学される方は、法科大学院の授業の「深さ」に耐えうるように、入門講座で学んだことをベースとして基礎固めをしておくといいと思います。

入門講座で学んだことをベースにして、部分的にパーツを交換したり、足りないパーツを補充するというイメージです。

これは、慶應ロースクールの先輩で在学1年目に旧司法試験に合格した方が仰っていたことの受け売りですが、「法科大学院入学時点で入門講座で学んだことが曖昧だと、法科大学の授業でやっていることが真新しいことなのか、それともすでに学習した内容を掘り下げているだけなのかということの区別がつかなくなる、これが一番まずい」です。

自分の頭の中がめちゃくちゃなります。

司法試験との関係でも同じです。

私が見る限り、近年の不合格者の多くは、司法試験の傾向に合わせることができていないという以前に、入門講座レベルのこと(A、B+レベルのこと)すら理解・記憶できていない傾向にあります。

中には、基礎学力も知識もあるけど試験傾向に合わせることができず論文に落ちるというも人もいますが、今の受験者数と出題傾向からすると、稀だと思います(昔に比べて受験者数が半減していますし、癖や現場思考要素が強すぎる出題もだいぶ減りました)。

基礎学力も知識もあるのに、試験傾向に合わせることができず論文に落ちるという人が多かったのは、競争が厳しく、かつ、出題の癖が強かった平成23~24年までがピークです。

途中から、「伊藤塾の入門講座で法科大学院の学内試験に対応することができるか」というテーマから脱線し、「伊藤塾の入門講座で司法試験に対応することができるか」というテーマに入ってしまいました。

以下で、「伊藤塾の入門講座で司法試験に対応することができるか」について説明いたします。

伊藤塾の入門講座で司法試験に対応することができるか


伊藤塾の入門講座で学んだことが、基礎知識及び基礎力として、間接的に司法試験で役立つことになります。また、伊藤塾の入門講座で学んだ特定の条文・判例・論点に関する知識が、直接的に司法試験で役立つこともあります。

もっとも、前記2と同様、科目ごとの試験傾向に合わせて、理解を深める必要がある科目・分野・論点もありますし、理解を修正する必要がある科目・分野・論点もあります。

伊藤塾の入門講座で学んだことが土台として役に立ちますが、それだけでは足りない、ということです。

伊藤塾の入門講座で学んだことをベースにした上で、部分的にパーツを交換したり、足りないパーツを補充するというのは、司法試験と法科大学院の学内試験とで共通することです。

中上級者向けインプット講座(秒速・総まくり等)やアウトプット講座(秒速・過去問攻略講座等)を使った仕上げの勉強をスムーズに進めるために伊藤塾入門講座がある、という位置づけになります。 なので、学説選択を含め一部修正するべき箇所があることは、初学段階では気にしないようにしましょう。

私と伊藤塾とでは、担っている役割が違います。伊藤塾は、素人に分かりやすく法律を教えるプロです。入門講座でお世話になった伊藤真先生、高野先生、呉先生は本当にプロでした。一方、私は、伊藤塾等の入門講座で育った玄人を対象として、科目や個々の受験生の特徴に応じた対策を伝授するプロです。

学習の段階に応じて、適切な講座選びをし、適切に知識の交換・補充をすることで、予備校講座を上手に使って司法試験合格を果たしましょう。

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加藤ゼミナールは、加藤喬講師が代表を務める予備試験・司法試験のオンライン予備校です。

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加藤ゼミナール代表取締役
加藤 喬かとう たかし
加藤ゼミナール代表取締役
弁護士(第二東京弁護士会)
加藤ゼミナール代表
青山学院大学法学部 卒業
慶應義塾大学法科大学院(既修) 卒業
2014年 労働法1位・総合39位で司法試験合格
2021年 7年間の講師活動を経て、「法曹教育の機会均等」の実現と「真の合格実績」の追求を理念として加藤ゼミナールを設立
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