刑事訴訟法の論文学習で大事なことは、次の2つです。
1つ目は、判例・学説の規範を正しく事例に適用できるようになるために、規範の意味を正しく深く学習するということです。これは、刑法と同様です。
刑事訴訟法では、強制処分と任意処分の区別、任意処分の限界、任意同行後の取調べの適法性、現行犯・準現行犯逮捕、訴因変更の要否・可否、伝聞法則など、重要な分野・論点が繰り返し出題されます。同じ分野・論点が出題される頻度が最も高い科目であるといえます。
それだけに、論点に気が付き、論証を書くというところまでは多くの受験生ができるため、判例・学説の規範を使って「正しく、かつ、充実した当てはめをする」という、もう一歩先のレベルのことで差をつける必要があります。そのためには、規範を正しく使いこなすために、規範の意味を正しく深く理解しておく必要があります。
インプットでは、規範の意味について正しく深い知識を身に付け、アウトプットでは、問題演習を通じて規範に関する理解を深めるとともに規範を使うことに慣れていくことになります。こうしたプロセスを経ることで、試験本番でも規範を正しく使いこなせる真の実力が身に付くわけです。
2つ目は、推認過程の説明です。
刑事訴訟法では、推認過程を説明する場面が多いです。これが最も重視されているのが伝聞・非伝聞の区別においてですが、それ以外でも重視されています。
例えば、任意捜査の限界では、必要性の当てはめにおいて、事実→事実→必要性(法的評価)という推認過程が問われますし、捜索・差押えでは、証拠→争点たる事実という推認過程が問われます。伝聞法則でも、伝聞非伝聞の区別において、証拠→争点たる事実という推認過程が問われます。それ以外にも、事実から規範、証拠から争点たる事実という推認過程が問われる場面は多々あります(同種前科証拠、類似事実証拠など)。
こうした推認過程は、主として問題演習を通じて学んでいくものですが、特に伝聞非伝聞の区別において用いる推認過程については、インプット段階である程度網羅的に学習しておく必要があります。
ここで気を付けて頂きたいのは、試験本番では問題文の事実関係(証拠関係を含む)を踏まえて自力で推認過程を導出することになるものの、基本的には、既存の推認過程をベースとして考えるのであって、いちから推認過程を考えるわけではないということです。したがって、判例で問題となった推認過程、著名な基本書に書かれている推認過程、過去問で出題された推認過程は、事前におさえておくべきです。そうすることで、試験本番で手掛かりがない状態でいちから推認過程を考えることになり、考えるのに時間がかかったり、間違った推認過程を選ぶことにより伝聞非伝聞の結論も間違えるという事態を避けることができます。
これは、授業中に受講画面に映し出している基礎応用完成テキストの抜粋です。
伝聞非伝聞では、このように既存の推認過程を網羅的におさえておき、問題演習では「今回はどのパターンの推認過程なのか?」という視点で分析し、推認過程を導出することになります。
以上が、刑事訴訟法の論文学習のコツです。
参考にして頂けたらと思います。
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