今週、『刑事訴訟法 判例百選』第11版が発行されました。
→有斐閣のウェブサイト
刑事訴訟法の論文対策において、判例学習は非常に重要です。
判例百選第11版に追加された判例・裁判例のうち、論文対策として重要なのは次の4つであると考えます。
❶ 東京高判平成30年9月5日 ごみの任意提出・領置 [8]
❷ 東京高判令和3年6月16 日 任意出頭後の弁護人との面会[38]
❸ 最二小判平成30年3月19日 訴因変更命令義務 [48]
❹ 最一小決令和3年6月28日 一事不再理効の範囲 [96]
❶は、令和5年司法試験設問1において出題されているため、司法試験では当分出題されないと考えられます。もっとも、予備試験の刑事訴訟法では司法試験過去問が流用される傾向にあることと、予備試験では1度も領置が出題されていないことを踏まえると、令和6年以降の予備試験において、領置に関する裁判例として❶が出題される可能性は相当程度あります。
❷は、『弁護人等から任意取調べ中の被疑者との接見申出があった場合に捜査機関が執るべき対応』について、先例である福岡高判平成5年11月16日と異なる根拠と判断枠組みを示した裁判例です。そこまで重要な論点ではないのですが、身体拘束中の被疑者と弁護人等との接見については司法試験(H28)と予備試験(R3)で1度ずつ出題されていることも踏まえると、今後出題される可能性がないとも言い切れないので、念のため、❷の裁判例をベースとした論証をおさえておくのが望ましいです。
❸は、今回追加された判例・裁判例の中で最も重要であると考えます。訴因変更命令義務については、先例として最三小決昭和43年11月26日と最三小判昭和58年9月6日がありますが、これらはいずれも公判前整理手続導入前の事案に関するものです。これに対し、❸は、公判前整理手続を経た事件に関するものです。❸の判旨では言及されていませんが、公判前整理手続を経た事件における裁判所の訴因変更命令義務の有無・内容については、公判前整理手続の趣旨(充実した争点整理と審理計画の策定)、さらには公判前整理手続終結後の訴因変更請求は同手続の趣旨に照らして制限されると解されている(東京高判平成20年11月18日・百55)ことを踏まえて論じる必要があります。司法試験では公判前整理手続終結後の新たな主張・供述に関する問題点が2度出題されており(H28:被告人・弁護人における新たな供述・質問、R1:検察官の訴因変更請求)、公判前整理手続終結に伴う効果に関する問題意識が重視されていることからすると、❸が出題される可能性は決して低くありません。
❹は、一事不再理効の時間的範囲について、第一審判決時説と親和的な立場を示した判例です。一事不再理効は令和2年予備試験で出題されている一方で、司法試験では1度も出題されていないことを踏まえると、令和6年以降の司法試験において、一事不再理効に関する論点として、客観的範囲と共に時間的範囲も出題される可能性が相当程度あります。
判例の詳細な解説は、加藤ゼミナールの「試験対策メディア」で公開しています。是非、参考にして下さいませ。
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