憲法に限ったことではありませんが、論文試験として判例を学習する必要があるからといって、必ずしも判例集で判例の事案及び判旨を最初から最後まで読む必要はありません。
論文試験でこの判例を使うためには、この判例についてどこまで丁寧に勉強をする必要があるのかということから逆算して、判例ごとに勉強の仕方に濃淡をつけることになります。
例えば、閲読の自由(知る自由)は司法試験で2回出題されている(平成20年・平成30年)重要論点ですが、在監者の閲読の自由の制約が出題されるわけではありませんから、よど号ハイジャック記事抹消事件(百Ⅰ14)については、論文対策としては、「およそ各人が、自由に、さまざまな意見、知識、情報に接し、これを摂取する機会をもつことは、その者が個人として自己の思想及び人格を形成・発展させ、社会生活の中にこれを反映させていくうえにおいて欠くことのできないものであり、また、民主主義社会における思想及び情報の自由な伝達、交流の確保という基本的原理を真に実効あるものたらしめるためにも、必要なところである。それゆえ、これらの意見、知識、情報の伝達の媒体である新聞紙、図書等の閲読の自由が憲法上保障されるべきことは、思想及び良心の自由の不可侵を定めた憲法19条の規定や、表現の自由を保障した憲法21条の規定の趣旨、目的から、いわばその派生原理として当然に導かれるところであり、また、すべて国民は個人として尊重される旨を定めた憲法13条の規定の趣旨に沿うゆえんでもあると考えられる。」という閲読の自由(知る自由)の憲法上の権利の保障を認めた部分だけ精読して記憶しておけば足ります。
他方で、薬事法事件(百Ⅰ92)については、営業の自由の保障、形式的な職業規制が実質的には狭義の「職業選択の自由」に対する制約に当たる場合があること、職業規制における違憲審査基準の定立過程、手段適合性を否定したロジックというように、権利保障から目的手段審査に至るまで判例知識を使って答案を書くことになる出題が多い(例えば、平成26年司法試験、平成30年司法試験、令和2年司法試験)ため、職業規制における違憲審査の在り方・ポイントを学ぶために、事案と判旨を最初から最後までしっかりと読み込んでおく必要があります。
このように、判例には事案判旨の概要に目を通しておけば足りるものもある一方で、科目・分野・事案類型ごとの書き方も含めて当該判例から学ぶべきことを習得するためには事案判旨を最初から最後まで読んだ方が良いものもあります。
以下で挙げている10個の判例は、試験における出題可能性だけでなく、こうした事情も踏まえて選別したものです。
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- 憲法 ・堀越事件 百Ⅰ13
- 全農林警職法事件 百Ⅱ141
- 国籍法事件 百Ⅰ26
- エホバの証人剣道受講拒否事件 百Ⅰ41
- 津地鎮祭事件 百Ⅰ42
- 空知太神社事件 百Ⅰ47
- 徳島市公安条例事件 百Ⅰ83
- 岐阜県青少年保護育成条例事件 百Ⅰ50
- 薬事法事件 百Ⅰ92
- 在外国民選挙権訴訟 百Ⅱ147
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