加藤喬の司法試験・予備試験対策ブログ

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令和3年司法試験行政法設問1(1)で不選定決定の処分性を検討する際の理論構成

お疲れ様です。ただいま、加藤先生の令和3年行政法の答案を拝見しました。
1点、質問なのですが、設問1(1)における本件不選定決定の処分性の検討の際に、処分性を認める根拠として、申請権が認められていることをアピールするのは間違いであったか、ということです。
どういうことかと申しますと、「申請に対する行政庁の応答は処分にあたる」(中原茂樹「基本行政法」第3版113頁)という観点から、本件が「諾否の応答をすべきこと」(行手法2条3号)とされているかを検討するということです(申請権の有無を検討する)。
本件の個別法を見てみますと、本件条例の26条3項に「~通知しなければならない」、本件規則21条には(決定の通知)という規定があるので、「申請に対して審査及び諾否の応答がされるという手続的な権利が保障されている(=申請権がある)」(「基本行政法」第3版113頁)こととなり、申請の対する処分として処分性がある方向へ傾く論証ができないか…ということです。
なお、この点は橋本先生の連載第2回(https://gyoseihou.hatenablog.com/entry/2021/04/09)の末尾に「処分性の有無の解釈(まとめ)」として、「⑨ 上記とは一応別に、(中略)申請制度(申請権があること)が条文から明らかな場合(行政側の応答義務が法定されているなど)(中略)処分性を認めるテクニックがあることを意識する。」と書かれていることと同趣旨の主張です。私の説明では伝わりにくいかもしれないと考えたので、付記いたしました。
ただ、処分性の公権力性や直接具体的法効果性といった従来の規範と、この主張の位置づけがどうなるかについて書き方の難しさはあります...。
以上、よろしくお願いします。

令和3年司法試験、本当にお疲れ様でした。解答速報をご覧いただきありがとうございます。

会議録51~52行目では、「弁護士E:…屋台営業候補者の選定が申請に対する処分に当たるか、したがって、本件不選定決定が申請拒否処分に当たるかを検討すればいいでしょうか。」「弁護士D:基本的な方針はそれでいいと思いますが…」とありますから、本件不選定決定の処分性については「申請に対する拒否処分に当たるか」という観点から論じることになります。

論述の仕方としては、”理論上”、2つあります。

①処分性についての昭和39年最高裁判例の定式を前提として、関税定率法21条3項に基づく税関長の輸入禁制品該当通知の処分性を肯定した最高裁判例(最判S59.12.12・百Ⅱ159)のように、不選定決定を受けた者が法32条2項に基づき許可申請をしても拒否処分がされることはないという確立した実務の取扱いを認めることにより、本件不選定決定の法効果性を認める

②処分性についての昭和39年最高裁判例の定式を用いないで、条例25条に基づく「公募」への応募が法令に基づく「申請」権の行使に当たるとすることにより、それに対する不選定決定は申請に対する諾否の応答として拒否「処分」に当たると説明する

私の参考答案では①の構成を採用していますが、ご質問を受けて、本問で問われているのは②の構成だと思いました。というのも、会議録50~51行目では、本件不選定決定が申請に対する拒否処分に該当するかについて「本件条例及び本件条例施行規則の仕組みに即して」検討するようにと指示があるところ、①の構成だと、上記の確立した実務の取扱いの存否の検討過程で「本件条例及び本件条例施行規則の仕組み」に言及することができません。また、会議録50行目におけるにおける「Bさんは、屋台営業候補者の公募に応募して、本件不選定決定を受けたので、…本件不選定決定が申請拒否処分に当たるかを検討すればいいでしょうか。」という記述、及び会議録53~54行目における「Bさんが屋台営業候補者の公募に応募したのは、…」という記述からしても、本件不選定決定がBによる公募への応募に対してなされたことに着目して論じることが求められていることが分かります。

したがって、本件不選定決定の処分性については、令和2年司法試験設問1(1)で出題された農地転用許可のために必要とされる農用地利用計画の変更を求める本件申出に対する拒絶通知と同様、②の構成に従って検討することになるはずです。

なお、令和2年司法試験の採点実感では、②の構成に従って処分性を検討することが求められていた本件申出拒絶に関して、「設問1(1)について、会議録において、計画自体の法的性格(処分性)と計画変更の処分性とを別個に検討するよう、解答のための手順が示されているにもかかわらず、多くの答案は、それを無視し、処分の定義をいくつかの要素に分類した上で(例えば「公権力性」と「直接的法効果性」など)、それに当てはめて処分性の有無を判断するにとどまっていた。一口に処分性の問題といっても、例えば、行政規範や行政計画の処分性の有無が問われる場面と申請に対する処分かどうかが問われる場面とでは、検討すべき事項が異なるはずである。」(採点実感)、「「申出の拒絶に処分性が認められるかどうかを検討する際には、申出がどのような性質を持つのかという点を考えるべきであるが、かなりの答案が、申出の拒絶自体について、判例の処分性判断の定式に照らして処分性があるかどうかを検討していた。そうした答案は、問題の意図を十分に理解していないと思う。」(採点実感)とあります。したがって、本問でも、②の構成で書く際には、昭和39年最高裁判例の処分性の定式は使わないと思います。

大変貴重なご質問を頂き、誠にありがとうございます。私の解答速報の記事を修正するとともに、速報動画の撮り直しをさせて頂きます。

2021年05月21日
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加藤ゼミナールは、加藤喬講師が代表を務める予備試験・司法試験のオンライン予備校です。

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加藤ゼミナール代表取締役
加藤 喬かとう たかし
加藤ゼミナール代表取締役
弁護士(第二東京弁護士会)
加藤ゼミナール代表
青山学院大学法学部 卒業
慶應義塾大学法科大学院(既修) 卒業
2014年 労働法1位・総合39位で司法試験合格
2021年 7年間の講師活動を経て、「法曹教育の機会均等」の実現と「真の合格実績」の追求を理念として加藤ゼミナールを設立
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