加藤喬の司法試験・予備試験対策ブログ

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同時履行の抗弁の効果を否定するために必要とされること

いつもお世話になっております。総まくり2021を受講している者です。
民法の同時履行の抗弁権についての質問です。同時履行の抗弁権が本来的効果である履行拒絶権として主張される場合、その効果を否定するための再抗弁としては反対給付の履行の継続が必要とされています。
一方で、受領遅滞の固有の効果として債務者による履行提供の効果として受領遅滞に陥っている債権者は同時履行の抗弁権を失い、反対債務の履行遅滞を理由とする債務不履行責任を追及できるとされています(総まくり民法219頁)。
これは、同時履行の抗弁権の副次的効果である存在効果を奪う場面(解除、損害賠償請求、相殺)であり履行上の牽連性が問題にならないため一度の履行の提供で足りるという理解でよろしいのでしょうか?
いまいち、この関係性が理解しきれていない気がするためご回答お願い致します。

まず、債務者の履行の提供により債権者が同時履行の抗弁権を失うことは、受領遅滞の固有の効果ではありません。総まくりテキストでは、受領遅滞の固有の効果の4つ目である「④債務者の債権者に対する損害賠償請求権・解除権」において、債務不履行責任説と法定責任説の対立を取り上げています。これは、債務不履行責任説に立った場合には、受領遅滞の固有の効果の4つ目として、債務者の債権者に対する受領遅滞を理由とする損害賠償請求・契約解除が認められる一方で、法定責任説からは受領遅滞そのものを理由とする損害賠償請求・契約解除が認められず、ただ債務者の履行の提供により債権者が同時履行の抗弁を失ってい反対債務について履行遅滞に陥っている場合には履行遅滞を理由とする損害賠償請求・契約解除が認められる、という意味です。

次に、履行請求を阻止する場面における同時履行の抗弁については、反対給付の履行の提供をしただけでは、その効果を否定することができませんが、解除、損害賠償請求及び相殺において同時履行の抗弁の存在効果を否定する場面では、反対給付の履行の提供だけで足りると理解されています。

2021年05月03日
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加藤ゼミナールは、加藤喬講師が代表を務める予備試験・司法試験のオンライン予備校です。

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加藤ゼミナール代表取締役
加藤 喬かとう たかし
加藤ゼミナール代表取締役
弁護士(第二東京弁護士会)
加藤ゼミナール代表
青山学院大学法学部 卒業
慶應義塾大学法科大学院(既修) 卒業
2014年 労働法1位・総合39位で司法試験合格
2021年 7年間の講師活動を経て、「法曹教育の機会均等」の実現と「真の合格実績」の追求を理念として加藤ゼミナールを設立
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