加藤喬の司法試験・予備試験対策ブログ

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主観説と客観説とで中止犯の成否に違いが生じる事例

中止犯について、主観説と客観説で結論に違いが出る場合があるかどうかについて教えていただきたいです。
宜しくお願い致します。

中止犯の任意性に関する主観説は「行為者ができると思ったのに止めたのか、それともできないと思って止めたのか」を基準にする見解であり、客観説は「行為者の認識した事情が経験上一般に犯行の障害となるようなものか否か」を基準とする見解です(山口厚「刑法総論」第3版301頁)。

客観説も、全ての事情について「経験上一般に犯行の障害となるようなものか否か」を問題にするのではなく、「行為者の認識した事情」について「経験上一般に犯行の障害となるようなものか否か」を問題にする見解であるため、主観説と客観説とで結論が異なるケースはさほど多くありません。

とはいえ、行為者が、経験上一般に犯行の障害となるような事情について、普通人とは異なる評価を下したケースでは、主観説と客観説とで結論が異なることがあります。例えば、甲は、A宅内に侵入した上でA宅を全焼させるためにA宅内にガソリンを散布した後に、Aに110番通報されたところ、警察が来るまで時間があるから放火をすることは容易であるが、後で逮捕・勾留されたり処罰されるのは嫌だと考えて放火することなくA宅から去ったというケースでは、主観説からは任意性が認められます。これに対し、犯罪の発覚のおそれは経験上一般に犯行の障害となる事情であると理解されているため、客観説からは、任意性が否定されます(大塚裕史ほか「基本刑法Ⅰ」第3版295頁)。

2021年05月03日
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加藤ゼミナールは、加藤喬講師が代表を務める予備試験・司法試験のオンライン予備校です。

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加藤ゼミナール代表取締役
加藤 喬かとう たかし
加藤ゼミナール代表取締役
弁護士(第二東京弁護士会)
加藤ゼミナール代表
青山学院大学法学部 卒業
慶應義塾大学法科大学院(既修) 卒業
2014年 労働法1位・総合39位で司法試験合格
2021年 7年間の講師活動を経て、「法曹教育の機会均等」の実現と「真の合格実績」の追求を理念として加藤ゼミナールを設立
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