加藤喬の司法試験・予備試験対策ブログ

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憲法論文で判例の事件名まで明示する必要があるか

大学の憲法の授業で弁護士の先生から、判例に言及する際には事件名も挙げるようにとの指摘がありましたが、判例の規範を使うにとどまらず、事件名まで挙げるべきなのでしょうか。また、判例の事件名にはどれくらいの配点があるのでしょうか。

確かに、判例の事件名にも配点があります。例えば、「判例に言及する場合には、単に事件名や結論を提示するのみでは十分とは言い難い。」とする平成23年司法試験の採点実感、「本設問のように当然言及してしかるべき関連判例が存在する事案については、当該判例を明示し、その論旨を踏まえて自らの見解を示すことは必須である。」とする令和2年司法試験の採点実感からも、事件名にも配点があることが窺われます。

しかし、一番大事なことは、保障→制約→人権の性質と規制の態様”等”を考慮して違憲審査基準を定立→当てはめ(目的手段審査)という違憲審査の基本的な枠組みを前提として、利益衡量論に立っている判例の考え方を上記の枠組みに引き直して答案に反映することです。

なので、採点者から見て、「答案のこの部分は、あの判例のあの考え方を参考にしている」と判断できるのであれば、十分、合格水準です。そのため、「○○事件判決は、…」として判例の事件名に言及すること、さらには「判例は…」として判例に主語にして論じることすら、合格水準としては不要です。こうした書き方は、上位合格を目指した書き方です。

したがって、例えば、「形式的には職業遂行の自由に対する制約にとどまる規制も、実質的には狭義の職業選択の自由に対する制約と評価されることがある」とだけ書けば、薬事法判決のうち、形式的には職業遂行の自由に対する制約にとどまる薬局等の適正配置規制について実質的に狭義の職業選択の自由に対する制約に当たることを認めた部分を参考にして書いているのだなとして、積極的に評価されます。

2021年04月23日
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加藤ゼミナールは、加藤喬講師が代表を務める予備試験・司法試験のオンライン予備校です。

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加藤ゼミナール代表取締役
加藤 喬かとう たかし
加藤ゼミナール代表取締役
弁護士(第二東京弁護士会)
加藤ゼミナール代表
青山学院大学法学部 卒業
慶應義塾大学法科大学院(既修) 卒業
2014年 労働法1位・総合39位で司法試験合格
2021年 7年間の講師活動を経て、「法曹教育の機会均等」の実現と「真の合格実績」の追求を理念として加藤ゼミナールを設立
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