加藤喬の司法試験・予備試験対策ブログ

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集会規制の法令違憲審査において「明らかな差し迫った危険」に言及することの要否

いつもお世話になっております。
憲法について質問させて頂ければと思います。
集会の自由について、近年のいわゆる意見書型の出題形式で出題された場合、つまり問題文に司法事実が記載されておらず法律案段階で憲法上の問題点を検討する問題では、どのような構成が良いのでしょうか。
平成25年の出題のように、集会の申請があって不許可処分が出されたような場合、基本的な回答筋は、泉佐野市民会館事件の限定解釈規範(ないし、それを緩和した規範)を出して、「危険」の有無を具体的事情を使って当てはめるということになると思います。
しかし、これはあくまでも適用違憲の審査の話だとすれば、意見書型(法令違憲のみ)の問題では、通常の表現の自由の場合と同様に目的手段審査をするということになるのでしょうか。
その場合、泉佐野市民会館事件の判示は答案上、活用できるのでしょうか。
私としては、「集会の自由といえば泉佐野市民会館事件」のイメージがあり、集会の自由でこれを参照しないのは怖いと感じます。しかし、集会の自由が問題になっている判例は適用上の解釈を問題としたもので、意見書型(法令違憲のみ)の問題の答案と相性が悪いように思えます。あるとすれば、目的手段審査における手段必要性の部分で、限定解釈が可能であるとして、過剰な部分は違憲とする(つまり、「明らかに差し迫った危険があるとき」などを法令の要件にすべき、と意見する)といった感じになるのかな、とも考えておりますが、構成として適切でしょうか。
お教え頂ければ幸いです。よろしくお願いいたします。

泉佐野市民会見事件では、上告理由として、①本件条例7条1号及び3号自体の違憲性と②これらに基づく本件不許可処分の憲法21条1項違反等が主張されており、最高裁は、①については、不許可事由である3号について「明らかな差し迫った危険」による限定解釈(憲法適合的解釈なのか、合憲限定解釈なのかは踏み込みません)をすることにより、①の主張を排斥しているため(木下ほか「精読憲法判例[人権編]初版418頁)、「明らかな差し迫った危険」は法令違憲審査と無関係ではありません。

私だったから、法令違憲審査において、保障→制約→人権の性質と規制の態様を考慮して違憲審査基準を定立→当てはめ(目的手段審査)という違憲審査の基本的な枠組みを採用した上で、基本的人権としての集会の自由の重要性と不許可処分という規制の強度を理由として厳格審査の基準を定立し、手段審査のうち手段必要性のところで、「明らかに差し迫った危険」による限定解釈をすることにより手段必要性、ひいては法令自体の合憲性を肯定します。

ただ、例年、手段必要性の審査では「より制限的でない他の選び得る手段の存否」について具体的かつ丁寧に論じることが重視されているため、いきなり「明らかに差し迫った危険」による限定解釈に入るのは危険です。「より制限的でない他の選び得る手段の存否」については配点がある場合に配点項目を落とすことにならないように、まずは「より制限的でない他の選び得る手段の存否」について論じ、その存否にかかわらず、次に「明らかに差し迫った危険」による限定解釈をすることにより手段必要性を肯定する、という書き方が無難であると考えます。

2021年04月23日
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加藤ゼミナールは、加藤喬講師が代表を務める予備試験・司法試験のオンライン予備校です。

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加藤ゼミナール代表取締役
加藤 喬かとう たかし
加藤ゼミナール代表取締役
弁護士(第二東京弁護士会)
加藤ゼミナール代表
青山学院大学法学部 卒業
慶應義塾大学法科大学院(既修) 卒業
2014年 労働法1位・総合39位で司法試験合格
2021年 7年間の講師活動を経て、「法曹教育の機会均等」の実現と「真の合格実績」の追求を理念として加藤ゼミナールを設立
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