加藤喬の司法試験・予備試験対策ブログ

質問コーナー

0

同時傷害事例において先行者に傷害結果が帰責される理由

総まくり論証集2021刑法の購入者です。
「承継的共同正犯の事案にも刑法207条が適用されるか」という論点における論証に関する質問です。
論証中に「少なくとも先行者には傷害結果が帰責されることになる承継的共犯の事案…」との記載がありますが、本論点が問題となる事案では、傷害結果が先行者による暴行と因果関係を有するかが不明であるため、「少なくとも先行者には傷害結果が帰責されることになる」とはいえないのではないでしょうか。

同時傷害事例のうち後行者について承継的共同正犯の成否が問題となるのは、傷害結果が①「後行者の共謀加担前における先行者の暴行」と②「後行者の共謀加担後における先行者又は後行者の暴行」のいずれから生じたのが不明である場合です。

仮に①により傷害結果が生じている場合には、先行者の暴行①と傷害結果との間に問題なく因果関係が認められるため、傷害結果が先行者に帰責されます。②により傷害結果が生じている場合には、先行者の暴行②により傷害結果が生じているときは問題なく先行者に傷害結果が帰責され、後行者の暴行②により傷害結果が生じているときは一部実行全部責任の原則(60条)により先行者にも傷害結果が帰責されます。このように、傷害結果が①と②のいずれによって生じた場合であっても、先行者に傷害結果を帰責されるため、先行者については、利益原則の例外規定である同時傷害の特例を適用することなく、傷害結果が帰責されることになります。

 

2021年02月21日
講義のご紹介
もっと見る

コメントする

コメントを残す

コメントをするには会員登録(無料)が必要です
※スパムコメントを防ぐため、コメントの掲載には管理者の承認が行われます。
※記事が削除された場合も、投稿したコメントは削除されます。ご了承ください。

加藤ゼミナールは、加藤喬講師が代表を務める予備試験・司法試験のオンライン予備校です。

kato portrait
加藤ゼミナール代表取締役
加藤 喬かとう たかし
加藤ゼミナール代表取締役
弁護士(第二東京弁護士会)
加藤ゼミナール代表
青山学院大学法学部 卒業
慶應義塾大学法科大学院(既修) 卒業
2014年 労働法1位・総合39位で司法試験合格
2021年 7年間の講師活動を経て、「法曹教育の機会均等」の実現と「真の合格実績」の追求を理念として加藤ゼミナールを設立
質問コーナーのカテゴリ
ブログ記事のカテゴリ