加藤喬の司法試験・予備試験対策ブログ

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所持人の承諾なき所持品検査の要件の基本構造

いつもお世話になっております。
所持品検査の限界について質問があります。
米子銀行強盗事件(最決S53.6.20・百4)によれば、所持人の承諾なき所持品検査の要件は、①「捜索に至らない」こと、②「強制にわたらない」こと、③「所持品検査の必要性、緊急性、これによって害される個人の法益と保護されるべき公共の利益との均衡などを考慮し、具体的状況のもとで相当と認められる」ことの3つに整理されます。
③については、天秤の片方に「必要性、緊急性、公益」が乗り、もう片方に「個人の法益」が乗り、両者の間に合理的権衡が保たれていれば、「具体的状況のもとで相当」と認められると理解すれば宜しいでしょうか。?
職務質問のための有形力の行使についても同様の理解で宜しいでしょうか?
お答え頂ければ幸いです。

所持人の承諾なき所持品検査の限界は、(ⅰ)司法警察活動であれば令状が要する強制処分に至るものであってはならないことと、(ⅱ)必要性と法益侵害性との間の合理的権衡が保たれていることからなります。

米子銀行強盗事件が挙げる要件のうち、①「捜索に至らない」こと及び②「強制にわたらない」ことが(ⅰ)に、③「所持品検査の必要性、緊急性、これによって害される個人の法益と保護されるべき公共の利益との均衡などを考慮し、具体的状況のもとで相当と認められる」ことが(ⅱ)に対応します。

したがって、③については、天秤の片方に「必要性、緊急性、これによって…保護される公共の利益」を乗せ、もう片方に「所持品検査…によって害される個人の法益」が乗せた上で、両者を比較衡量して、両者間の合理的権衡が保たれているかにより判断することになります。

天秤の片方に載っている「必要性、緊急性、これによって…保護される公共の利益」が広い意味での所持品検査の必要性の有無・程度を意味し、もう片方に載っている「所持品検査…によって害される個人の法益」が所持品検査による法益侵害性の有無・重みを意味しているわけです。

職務質問のために有形力行使についても、同様に理解することになります。

2021年02月20日
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加藤ゼミナールは、加藤喬講師が代表を務める予備試験・司法試験のオンライン予備校です。

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加藤ゼミナール代表取締役
加藤 喬かとう たかし
加藤ゼミナール代表取締役
弁護士(第二東京弁護士会)
加藤ゼミナール代表
青山学院大学法学部 卒業
慶應義塾大学法科大学院(既修) 卒業
2014年 労働法1位・総合39位で司法試験合格
2021年 7年間の講師活動を経て、「法曹教育の機会均等」の実現と「真の合格実績」の追求を理念として加藤ゼミナールを設立
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