加藤喬の司法試験・予備試験対策ブログ

質問コーナー

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補強法則における罪体説と実質説の対立

平素は大変お世話になっております。
刑事訴訟法の補強法則について、質問がございます。
補強証拠が必要とされる範囲について、判例は実質説、学説は形式説(罪体説)に立っていると思います。
両者の違いは、補強の範囲として、罪体の一部のみで足りる(実質説)のか、罪体の全部又は主要な部分(形式説・罪体説)まで必要なのか、だと思います。
その上で、なぜ、学説は(罪体の一部のみでは足りず)罪体の全部または主要な部分まで必要としているのでしょうか。また、なぜ判例は(罪体の全部または主要な部分ではなく)罪体の一部のみで足りる、と考えているのでしょうか。
基本書等では結論のみ記載されているものが多く、どう論証したらよいのか悩んでおります。
何卒、宜しくお願いいたします。

補強証拠が必要とされる範囲について、判例は実質説、学説の多くは罪体説に立っていると理解されています(宇藤崇ほか「リーガルクエスト 刑事訴訟法」第2版451~453)。

酒巻匡「刑事訴訟法」初版517頁では「自白偏重により架空の犯罪事実が認定されてしまう危険防止の観点からは、客観的事実のうち犯罪構成要素の主要部分に補強が必要というべきである」とあるように、罪体説は、「架空の犯罪事実が認定されてしまう危険防止」を重視して、念には念をということで、罪体の重要部分のについて補強を必要とする見解です(古江賴隆「事例演習刑事訴訟法」第2版309頁)。

しかし、罪体の重要部分について補強がなくても、自白の真実性(自白の内容となっている事実の真実性)を担保するに足りる犯罪事実についてさえ補強があれば、自白偏重による誤判を防止することができるので、罪体説は自白法則の制度趣旨から見て過剰な要求をするものであるといえます(上記の通り、罪体説は、念のためにという趣旨で、罪体の重要部分についてまで補強を要求しているのです)。

したがって、実質説に立っても、自白法則の制度趣旨を満たすことになります。

2021年01月18日
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加藤ゼミナールは、加藤喬講師が代表を務める予備試験・司法試験のオンライン予備校です。

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加藤ゼミナール代表取締役
加藤 喬かとう たかし
加藤ゼミナール代表取締役
弁護士(第二東京弁護士会)
加藤ゼミナール代表
青山学院大学法学部 卒業
慶應義塾大学法科大学院(既修) 卒業
2014年 労働法1位・総合39位で司法試験合格
2021年 7年間の講師活動を経て、「法曹教育の機会均等」の実現と「真の合格実績」の追求を理念として加藤ゼミナールを設立
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