加藤喬の司法試験・予備試験対策ブログ

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行政法で個別の条文の使い方がわからない原因とその改善策

行政法における個別法の法規(や条文)の選択のコツについて質問です。端的にいうと、どの条文を選択すべきかの判断が遅い又はできないため、結局答案を書くという段階に移れないといった事態に陥っており困っています。
例えば、秒速過去問攻略講座のうち平成26年行政法設問1の模範答案についてです。
裁量基準の合理性を検討するにあたり、なぜ「法33条の3第2項・施行規則8条の15第2項10号」を趣旨・目的の検討対象とする根拠法令として選択できているのかが分かりません。認可を必要とすること自体を定めているのは法33条ですし、会議録111行目の「採取計画と保証書とは一体であると考えて」との記載から、採取計画に関する法33条の2も根拠法令なのか?と疑ってしまいます。また、「(認可の基準)」と銘打っていることから33条の4も気になってしまいました。
このように、検討すべき法令の選択にいつも時間をかけて迷ってしまい行政法の演習に強い苦手意識を有しています。
上記の裁量基準の問題のみならず、処分性、原告適格等においても個別法を引用する局面は多々あると思うのですが、自信をもって適切な条文引用をするコツはあるのでしょうか。

たまに、行政法の個別法の使い方に慣れるために、事例研究行政法など網羅性のある市販演習書を使って様々な個別法に目を通しておくといった助言を見聞きすることがありますが、私は違うと思います。

個別法の条文は、問題文の具体的事実と同様、これらに適用する判断枠組みで照らしながら読むべきものです。

例えば、刑法の問題文に、「甲が甲方2階でVを監禁してVに対して執拗な暴行を加え続けたところ、Vが甲による暴行から逃れるためにやむなく甲方2階から飛び降り、落下時に両足を骨折した」と書かれている場合、危険の現実化説に関する判断枠組み(直接実現型、間接実現型:高速道路侵入事件型・トランク監禁致死事件型)で照らしながら問題文を読むことになります。

そして、V負傷の直接的原因はVが甲方2階から飛び降りたというV自身の行為であるから直接実現型ではなく間接実現型である⇒間接実現型のうち高速道路侵入事件型の事案だから甲による監禁・暴行がVによる飛び降りを誘発したといえるかにより危険の現実化の有無が決まる⇒2階から飛び降りることは危険性の高いものだから異常性の高いものとして甲の監禁・暴行により誘発されたとはいえないのではないか⇒しかしVは甲から執拗な暴行を受けていたのだから甲の監禁・暴行から逃れるための選択としてさほど不自然ではないのではないか⇒仮にそうであるならばVによる飛び降りは甲の監禁・暴行に誘発されたといえるのではないか、というように、問題文の事実を意味付けをすることになります。

行政法の個別法の条文も同じです。行政裁量、処分性、原告適格などに関する判断枠組み(又は処理手順)について深く理解していれば、判断枠組み(又は処理手順)に照らして個別法の条文を読むことができるようになるため、自然と、個別の条文のうちどれをどういった形で使えばいいのかが分かるようになります。

したがって、判断枠組み(又は処理手順)についての理解を深めて頂くことをお薦めいたします。

2021年01月17日
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加藤ゼミナールは、加藤喬講師が代表を務める予備試験・司法試験のオンライン予備校です。

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加藤ゼミナール代表取締役
加藤 喬かとう たかし
加藤ゼミナール代表取締役
弁護士(第二東京弁護士会)
加藤ゼミナール代表
青山学院大学法学部 卒業
慶應義塾大学法科大学院(既修) 卒業
2014年 労働法1位・総合39位で司法試験合格
2021年 7年間の講師活動を経て、「法曹教育の機会均等」の実現と「真の合格実績」の追求を理念として加藤ゼミナールを設立
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