加藤喬の司法試験・予備試験対策ブログ

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令和2年予備試験商法設問1 子会社乙社の取締役Bによる利益相反取引について親会社甲社の代表取締役Aが同意したことの意味 

加藤先生の「令和2年予備試験商法の解説動画」を視聴した上で、会社法の問題について質問があります。
先生は答案上では設問1のBの乙社に対する責任について、乙社の唯一の株主である甲社の代表取締役であるAがBの取引について同意している点については指摘されていなかったと思うのですが、直接取引で損害を負うことになる唯一の株主が利益相反取引に同意をしていることは、公正な取引条件説からはBの任務懈怠を覆すという理論構成を取ることはできなくとも、株主全員の同意があった場合としてBの損害賠償責任を免責する余地が生じうるという理論構成はとれないのでしょうか?
もちろん、甲社株主が全員同意していたという場合ではないので責任の免責は認められないと思うのですが、その事情について触れることはできないのか疑問に思いました。ご回答いただけますと幸いです。よろしくお願い致します。

取締役がAしかいない非取締役会設置会社である甲社では、Aが単独で業務を決定し、執行します(会社法348条1項、田中亘「会社法」第2版241頁)。したがって、AがBに対して「それならば300万円で、乙社が買い取ることにすればいいよ」と述べたことをもって、Aが甲社の代表取締役としてBによる利益相反取引について同意をしたとみることにより、Aが代表した甲社(100%株主)による同意があったとみる余地もあります。

しかし、Aを介した甲社(100%株主)による同意は、利益相反取引をすること自体を対象とするものであり、Bの責任免除まで対象としたものではないと思いますから、会社法424条でいう責任免除についての「総株主の同意」があったと評価することはできないと思いますし、そこまで書くことは想定されていないと思います。

そうすると、Bによる利益相反取引についてAを介して甲社(100%)株主による同意があったと評価することができても、それは、利益相反取引の手続規制への違反がないことを意味するにとどまり、免責にはつながらないと思います。手続規制違反の有無にかかわらず、利益相反取引を理由する任務懈怠推定が及びますので。

そこで、私の答案では、AがBに対して「それならば300万円で、乙社が買い取ることにすればいいよ」と述べたという事情は、Aの子会社取締役に対する監督監視義務違反を基礎づける事情として使うにとどめています。

2020年11月18日
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加藤ゼミナールは、加藤喬講師が代表を務める予備試験・司法試験のオンライン予備校です。

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加藤ゼミナール代表取締役
加藤 喬かとう たかし
加藤ゼミナール代表取締役
弁護士(第二東京弁護士会)
加藤ゼミナール代表
青山学院大学法学部 卒業
慶應義塾大学法科大学院(既修) 卒業
2014年 労働法1位・総合39位で司法試験合格
2021年 7年間の講師活動を経て、「法曹教育の機会均等」の実現と「真の合格実績」の追求を理念として加藤ゼミナールを設立
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