加藤喬の司法試験・予備試験対策ブログ

質問コーナー

0

原告適格の検討手順の最初で不利益要件に言及するべきか

加藤先生は、「予備試験論文式3か年 問題と解説①」42頁において、法律上保護された利益説における原告適格の要件について、①当該処分により原告が何らかの利益を侵害され又は必然的に侵害されるおそれがあること(不利益要件)、②当該利益が処分の根拠法規によって保護されていること(保護範囲要件)、③当該利益が処分の根拠法規によって個々人の個別的利益としても保護されていること(個別保護要件)に分類した上で、①は原告適格の当てはめに包摂されるため、①を飛ばして②から書き始めればいい、と説明されています。
ところが、某予備校の答練で、事業認定がなされた土地の所有権者が事業認定を対象として提起した抗告訴訟において原告適格を有するかという問題が出題され、配点表では、法の仕組みによれば起業地内の土地所有権者が違法な事業認定がなされたら収用裁決がなされ土地所有権を侵害されるおそれがあることの指摘をしてから個別保護要件を検討しなければ点数が入らないようになっており、②→③→①の順で書いた私の答案は減点されていました。
このように、①→②→③の順序で検討しなければならない事案類型が例外的に存在するということなのでしょうか?
もしよろしければお答えいただけますと幸いです。よろしくお願いいたします。

①は、③の最後の段階である「原告適格が認められる人的範囲の線引きをするための基準への当てはめ」で認定されることになりますから、原告適格の検討過程の最初に書く必要はないと考えます。実際、過去の出題趣旨・採点実感でも、①から先に書くようにと指摘されることはありません。そうすると、仮に原告適格の検討過程の最初に①を書くのであれば、②・③で被侵害利益として想定している利益を採点者に伝えるために書く、ということになります。

司法試験では、問題文や会議録において、原告ごとに、被侵害利益の内容について具体的に明示されています。そうすると、採点者としては、②・③では問題文や会議録で示した被侵害利益が対象になっているという前提で答案を読むことになります。したがって、②・③で被侵害利益として想定している利益を採点者に伝えるために①を最初に書く必要はありません。

これに対し、仮に、問題文や会議録において問題にするべき被侵害利益の内容について具体的に明示されていないのであれば、②・③で被侵害利益として想定している利益を採点者に伝えるために、①を最初に書くことになります。

2020年10月10日
講義のご紹介
もっと見る

コメントする

コメントを残す

コメントをするには会員登録(無料)が必要です
※スパムコメントを防ぐため、コメントの掲載には管理者の承認が行われます。
※記事が削除された場合も、投稿したコメントは削除されます。ご了承ください。

加藤ゼミナールは、加藤喬講師が代表を務める予備試験・司法試験のオンライン予備校です。

kato portrait
加藤ゼミナール代表取締役
加藤 喬かとう たかし
加藤ゼミナール代表取締役
弁護士(第二東京弁護士会)
加藤ゼミナール代表
青山学院大学法学部 卒業
慶應義塾大学法科大学院(既修) 卒業
2014年 労働法1位・総合39位で司法試験合格
2021年 7年間の講師活動を経て、「法曹教育の機会均等」の実現と「真の合格実績」の追求を理念として加藤ゼミナールを設立
質問コーナーのカテゴリ
ブログ記事のカテゴリ