加藤喬の司法試験・予備試験対策ブログ

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試験本番で規範を思い出すことができない場合に、その場で規範を作り上げて、それを答案に書くべきか

試験本番で規範を思い出すことができない場合、即興で、問題文の事実を抽象化するなどして規範を作り出し、それを答案に書くという方法では、やはり減点されるのでしょうか。不正確な規範を書くくらいなら、規範を書かないでいきなり当てはめに入ったほうが、無難でしょうか。

まず、現行の司法試験論文式・予備試験論文式の採点方式は原則として加点方式ですから、ある規範について不正確な論述をした場合には、その規範に振られている配点を超えて積極的に減点されるということはなく、積極的に評価できる論述があるのであればその限りで加点する、ということになります。例えば、刑法235条の「窃取」が論点になっている事案において、「窃取」の規範:2点、当てはめ:6点という配点になっている場合に、「窃取」の規範として不正確なことを書いたときは、2点丸々落とすか、積極的に評価できる範囲で0.5点、0.7点というように部分点が付く、ということです。なので、書いたほうが良いです。

次に、司法試験論文式でも予備試験論文式でも、論述形式として、法的三段論法に従うことが非常に重視されています。この意味でも、不正確でも構わないから規範を書く、ということになります。例えば、上記の通り「窃取」が論点になっているにもかかわらず、「窃取」の規範を飛ばして、いきなり当てはめを大展開していると、法的三段論法を守っていないことを直接的な理由として失点したり、採点者に悪印象を与えることを介して間接的に採点上の不利益が生じたりする可能性が高いです。

さらに、「窃取」の規範を飛ばして当てはめを書いている場合、採点者から見て、この答案ではどういった法的観点に従ってこの事実を摘示・評価しているのかという、事実の摘示・評価の前提となっている観点が分かりませんから、当てはめの採点にも悪影響を及ぼすことになります。

したがって、不正確でも構いませんから、問題文の事実関係から出題者が想定している当てはめを把握し、その当てはめをしやすい規範をその場で作り上げて、答案に書くべきです。

なお、質問者様が言う「即興で、問題文の事実を抽象化するなどして規範を作り出し、それを答案に書く」という姿勢は非常に大事です。論文試験では、現場思考問題が出題されることもありありますし、自分が規範を記憶していない既存論点が出題されることもあります。こうした場合、法的三段論法という論述形式を守った上で問題文の事実関係の摘示・評価による当てはめをすることになります。こうした場面では、「問題文のヒントから出題者が求めている当てはめを読み取り、その当てはめをしやすい抽象論を考えて、文章化する」という読解・思考・文章の姿勢と力が必要になってきます。こうした底力も、今後の問題演習を通じて鍛えてきましょう。

2020年10月10日
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加藤ゼミナールは、加藤喬講師が代表を務める予備試験・司法試験のオンライン予備校です。

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加藤ゼミナール代表取締役
加藤 喬かとう たかし
加藤ゼミナール代表取締役
弁護士(第二東京弁護士会)
加藤ゼミナール代表
青山学院大学法学部 卒業
慶應義塾大学法科大学院(既修) 卒業
2014年 労働法1位・総合39位で司法試験合格
2021年 7年間の講師活動を経て、「法曹教育の機会均等」の実現と「真の合格実績」の追求を理念として加藤ゼミナールを設立
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