加藤喬の司法試験・予備試験対策ブログ

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前訴確定判決が後訴に及ぼす拘束力又は制限について

例えば、前訴で敗訴した当事者が、前訴の蒸し返しっぽい後訴を提起したという場合については、既判力や信義則が問題になると思います。この場合、既判力と信義則のいずれから検討するべきでしょうか。

平成25年司法試験設問4のように、問題文で既判力を飛ばして信義則を使って検討することが誘導されているといった事情がない限り、既判力から検討することになります。例えば、売買契約に基づく目的物引渡請求訴訟の判決確定後の代金支払請求訴訟における審理判断の制限が問題となった平成29年司法試験設問3に関する出題趣旨では、「本問では、既判力などの制度的効力を否定する場合には、既判力以外の理由、例えば信義則などにより、Xが本件絵画の売買契約の成否及びその代金額を後訴で争えなくなるか否かについて検討することも求められる。」と説明されています。したがって、仮に信義則で処理するのであれば、少なくとも、「既判力による制限 ✖」ということを先に論じる必要があります。

後訴における拘束の有無が問題となっている審理判断の対象が前訴確定判決の主文中における責任に属する事柄である場合には、仮に信義則で処理するのであれば、「既判力による制限✖」に加え、「既判力に準ずる効力✖」についても先に論じる必要があります。

平成29年司法試験の出題趣旨では、信義則による処理に先立ち争点効についても論じるようにとの指摘はなされていませんが、配点項目を網羅するという観点からは、後訴における拘束の有無が問題となっている審理判断の対象が前訴確定判決の理由中の判断事項である場合には、仮に信義則で処理するのであれば、「既判力による制限✖」のみならず、「争点効✖」についても先に論じたほうが良いです。

それから、本案における審理判断の制限が問われているのであれば、理論上、既判力・既判力に準ずる効力・争点効・信義則のいずれによっても構成することができますが、訴えの不適法却下が問われているのであれば、信義則で構成することになります。既判力・既判力に準ずる効力・争点効には本案における審理・判断を拘束する効力しかなく、刑事事件の確定判決の一事不再理効のような効力までは認められないからです(もっとも、訴訟判決に既判力を肯定する見解からは、既判力には、訴訟要件の審理・判断を拘束する効力まで認められるという意味で、その限りにおいて、訴えの不適法却下を導く効果まで認められます)。これに対し、信義則には、本案における審理・判断を制限するという効力だけでなく、後訴を不適法却下(門前払い)するという効力が認められることもあります(信義則による不適法却下の例としては、最一小判昭和51・9・30・百79、最二小判平成10・6・12・百80等が挙げられます)。

2020年09月09日
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加藤ゼミナールは、加藤喬講師が代表を務める予備試験・司法試験のオンライン予備校です。

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加藤ゼミナール代表取締役
加藤 喬かとう たかし
加藤ゼミナール代表取締役
弁護士(第二東京弁護士会)
加藤ゼミナール代表
青山学院大学法学部 卒業
慶應義塾大学法科大学院(既修) 卒業
2014年 労働法1位・総合39位で司法試験合格
2021年 7年間の講師活動を経て、「法曹教育の機会均等」の実現と「真の合格実績」の追求を理念として加藤ゼミナールを設立
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