加藤喬の司法試験・予備試験対策ブログ

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ある処分について処分要件該当性を検討する際に、条文解釈による規範定立と行政裁量という2つの法律構成を併用することはあり得るのか

例えば、ある処分について、処分要件該当性を検討する際に、条文解釈による規範定立と行政裁量という2つの法律構成を併用するということはあり得るのでしょうか。仮にあり得るのであれば、条文解釈による規範定立から先に書くことになるのでしょうか。平成29年司法試験設問2(2)に関する出題趣旨・採点実感を読んで疑問を抱きました。

平成29年司法試験の出題趣旨では、路線廃止の取消訴訟における違法事由の立論が求められている設問2(2)について、①「まず、現に通行者による利用が存在して道路としての機能が喪失していない以上は同条の要件を満たさないといえるのか、それとも、現に利用が存在しても、通行者による利用の程度の乏しさ、代替的な交通路の存在などに鑑みて一般交通の用に供するに適さない状況があれば「必要がなくなつた」として廃止できるのかを検討、しなければならない。」、②「更に上記の要件該当性の判断について行政庁に裁量権が認められるのかを検討しなければならない。」とされています。ここでは、①路線廃止の処分要件である「一般交通の用に供する必要がなくなつた」の具体的内容について解釈により明らかにした上で、②当該具体的内容に該当するとした市長の裁量判断の当否を検討することが求められているといえます。そうすると、処分要件については、「条文解釈による規範定立っぽいこと」と「行政裁量」という構成が両立すると思います。もっとも、行政裁量が法律構成の柱であり、ここでいう「条文解釈による規範定立っぽいこと」とは、厳密には、処分要件を定める文言の規範を定立するというものではなく、処分要件に関する裁量権行使の際に従うべき観点・指針を明らかにするものにすぎない、という理解が無難であると考えます。そして、あくまでも行政裁量が法律構成の柱であり、「条文解釈による規範定立っぽいこと」は裁量権行使の際に従うべき観点・指針を示すものにとどまるのですから、理論上は、「行政裁量の存在」⇒「条文解釈による規範定立っぽいこと」という流れで書くことになるはずです。にもかかわらず、平成29年司法試験設問2(2)において「条文解釈による規範定立っぽいこと」⇒「行政裁量の存在」という流れで論じることが求められているのは、会議録において、「そもそもX2が通学路に利用していて本件市道の機能が失われていない以上,路線の廃止は許されないのではないかと思うのですが。・・道路法の規定に即してそのような解釈が可能かどうか検討してください。」というように、「条文解釈による規範定立っぽいこと」「条文解釈的なこと」から先に書くことを示唆する誘導があるからです。

なお、「条文解釈による規範定立っぽいこと」と「行政裁量の存在」とは一応両立し得るものですが、平成29年司法試験設問2(2)で求められている書き方はかなり特殊ですから、会議録等で誘導がない限り、ある処分の処分要件該当性を検討する際に「行政裁量の存在」を認める一方で「条文解釈による規範定立っぽいこと」もするという書き方は避けるべきです。

2020年09月07日
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加藤ゼミナールは、加藤喬講師が代表を務める予備試験・司法試験のオンライン予備校です。

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加藤ゼミナール代表取締役
加藤 喬かとう たかし
加藤ゼミナール代表取締役
弁護士(第二東京弁護士会)
加藤ゼミナール代表
青山学院大学法学部 卒業
慶應義塾大学法科大学院(既修) 卒業
2014年 労働法1位・総合39位で司法試験合格
2021年 7年間の講師活動を経て、「法曹教育の機会均等」の実現と「真の合格実績」の追求を理念として加藤ゼミナールを設立
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