表現規制の着眼点はいくつもあるのですが、今回は1⃣政府の言論弾圧の動機と2⃣虚偽表現規制について取り上げます。
1⃣政府の言論抑圧の動機
表現規制では、国家権力を担う政府は自分たちに不都合な表現を抑圧したいという動機を有しているという着眼点を持っておきましょう。
特に、自分たちが批判等の対象とされる政治的表現であれば尚更です。赤坂正浩「憲法講義(人権)」初版34頁でも、「国家権力の担当者が常に最も強い関心を抱き、操作し抑圧する最も強い動機をもつのは政治的表現の自由である。」とあります。
法律の制定過程によっては、真の目的は公共的利益の保護ではなく政府に不都合な言論を弾圧することにあると認定する余地もあります(これを「隠された目的」といいます。)。
平成26年司法試験公法系第1問でも、表現規制ではありませんが、自然保護地域におけるタクシーの運行の許可制を定める自主条例の憲法22条1項適合性が問われた事案において、一部の許可条件(車種要件)について、隠された目的として、条例で明記されている「自然保護地域の豊かな自然を保護する」ことのほかに地域のタクシー会社の優遇・優先という政策目的も含まれているのではないか(あるいは、真の目的は後者ではないのか)という問題意識が問われています。
「隠された目的」という着眼点は規制全般に妥当し得るものですから、再度の出題に備えておさえておきましょう。
2⃣虚偽表現規制
虚偽表現規制については、次の着眼点が重要です。
①真実は誤りと衝突することによってより明確に認識されるのだから虚偽の言明ですら公共的な議論に価値のある貢献をするものである
②真実性の判断が難しい場合もある
③恣意的な規制運用を通じて何が真実であるかを政府が決めることが可能になるおそれがある
いずれも、令和1年司法試験公法系第1問の出題趣旨・採点実感で言及されている着眼点です。
このように、虚偽表現規制については、①~③といった違憲方向の着眼点も複数あるので、安易に保障を否定したり低価値表現だと論じるべきではありませんし、手段審査においても慎重に検討をする必要があります。
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