刑法の錯誤論の論証で故意責任の本質に言及するべきか?

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刑法の錯誤論の論証では、基本的に故意責任の本質にも配点があります。

平成27年司法試験の出題趣旨でも、抽象的事実の錯誤について、「本件の錯誤は、…抽象的事実の錯誤であるから、このような錯誤の場合にどのように処理するか…故意責任の本質について触れて一般論を簡潔に示した上…」とあります。

もっとも、出題趣旨・採点実感で故意責任の本質について明示的に言及されたのは1度だけです。

また、刑法の採点で重視されているのは、①罪名選択の正確性、②検討事項の網羅性、③答案全体の論理構造、④規範の正確性、⑤当てはめの正確性・説得力などであり、論証の理由付けは重視されていないのが通常です。

したがって、抽象論重視の特殊な出題でない限り、「故意責任の本質は~」とフルスケールで言及する必要はなく、「規範の問題に直面するから」「規範の問題は構成要件の形式で与えられているから」くらいで足り、論点によっては(ex.因果関係の錯誤など)丸々飛ばしても構いません。

なお、論証の理由付けは重視されていませんが、論点相互の矛盾には気を付ける必要があります。例えば、ある論点の理由付けで因果的共犯論を用いておきながら、別の論点では因果的共犯論からは導き得ない見解を採用するなどです。

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講師紹介

加藤 喬 (かとう たかし)

加藤ゼミナール代表取締役
弁護士(第二東京弁護士会)
司法試験・予備試験の予備校講師
6歳~中学3年 器械体操
高校1~3年  新体操(長崎インターハイ・個人総合5位)
青山学院大学法学部 卒業
慶應義塾大学法科大学院(既修) 卒業
労働法1位・総合39位で司法試験合格(平成26年・受験3回目)
合格後、辰已法律研究所で講師としてデビューし、司法修習後は、オンライン予備校で基本7科目・労働法のインプット講座・過去問講座を担当
2021年5月、「法曹教育の機会均等」の実現と「真の合格実績」の追求を理念として加藤ゼミナールを設立

執筆
・「受験新報2019年10月号 特集1 合格
 答案を書くための 行政法集中演習」
 (法学書院)
・「予備試験 論文式 問題と解説 令和元年」
 憲法(法学書院)
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・「予備試験 論文式 問題と解説 平成30年」
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・「予備試験 論文式 問題と解説 平成29年」
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・「予備試験 論文式 問題と解説 平成23~
 25年」行政法(法学書院)

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