加藤喬の司法試験・予備試験対策ブログ

因果的共犯論から承継的共同正犯を肯定できるか?

0

承継的共同正犯については、共犯の処罰根拠に関する因果的共犯論からは、因果性は遡及しないことを前提に、先行行為により構成要件該当事実の一部が惹起されている以上、後行者の関与行為が構成要件該当事実全体に因果性を及ぼすことはできないとして、否定説が導かれます。

もっとも、少なくとも最高裁平成24年決定は、承継的共同正犯に関する中間説のうち、後行者の関与行為と結果との間の因果性を基準とする見解を採用していると理解されています(これは「限定中間説」とも呼ばれる見解です。)。
因果的共犯論から最高裁平成24年決定を説明する学説は、処罰の隙間を埋める必要性という政策的理由から、共犯の処罰根拠である因果性を拡張的に理解し、承継的共同正犯の場面においては、構成要件該当事実のうち最も重要である結果(法益侵害)に対する因果性があれば足りると理解するわけです(以上につき、山口厚「新判例から見た刑法」第3版114~124頁参照)。

なお、だまされたふり作戦事件における最高裁平成29年決定については、因果性を基準とする見解から不能犯の議論を応用することにより承継的共同正犯の成立を認めたとの説明がある一方で、因果性とは異なる基準を用いているとの説明もあります。

承継的共同正犯については、深い理解が要求されるため、因果的共犯論から否定説や限定中間説を導くための説明の仕方、具体的事例における限定中間説からの結論の導き方(正しい当てはめの仕方)をしっかりと学習しておきましょう(加藤ゼミナールの受講者の方は、総まくりテキスト、総まくり論証集、基礎応用完成テキストの該当箇所に書かれていることを理解すれば足ります。)。

講義のご紹介
もっと見る
法律コラムに関するご質問は、質問コーナーではなく、当該コラムのコメント欄に投稿して頂きますようお願いいたします。

コメントする

コメントを残す

コメントをするには会員登録(無料)が必要です
※スパムコメントを防ぐため、コメントの掲載には管理者の承認が行われます。
※記事が削除された場合も、投稿したコメントは削除されます。ご了承ください。

加藤ゼミナールは、加藤喬講師が代表を務める予備試験・司法試験のオンライン予備校です。

kato portrait
加藤ゼミナール代表取締役
加藤 喬かとう たかし
加藤ゼミナール代表取締役
弁護士(第二東京弁護士会)
加藤ゼミナール代表
青山学院大学法学部 卒業
慶應義塾大学法科大学院(既修) 卒業
2014年 労働法1位・総合39位で司法試験合格
2021年 7年間の講師活動を経て、「法曹教育の機会均等」の実現と「真の合格実績」の追求を理念として加藤ゼミナールを設立
質問コーナーのカテゴリ
ブログ記事のカテゴリ