刑事訴訟法で最も受験生間で差が付く分野が、伝聞・非伝聞の区別であるといえます。
伝聞証拠とは、公判廷外供述における原供述者の知覚・記憶・表現・叙述(これらはまとめて「供述過程」と呼ばれます。)については、反対尋問(憲法37条2項前段、規則199条の4)と裁判官による供述態度の直接観察(直接主義の要請)によるテストと、尋問前の宣誓(154条、規則117条)・偽証罪による処罰の予告(刑法169条、規則120条)による信用性の担保がないとの理由から、「公判廷外供述を内容とする証拠であって、その供述の内容をなす事実の存在(真実性)を要証事実(ここでは「直接の立証事項」を意味します。)とするもの」を意味すると定義されます(川出敏裕「判例講座Ⅰ」359頁参照)。
伝聞・非伝聞の判断では、①上記の形式説の定義を前提として、検察官の立証趣旨(又は立証方針)に従い、当該証拠(書面、公判廷供述)によりいかなる主要事実をどのように証明するのかいう推認過程を導き(ここでは「検察官請求証拠」を前提とします。)、②その推認過程における直接の立証事項を要証事実として捉え、③要証事実との関係で公判廷外供述の内容の真実性が問題となるか否かを判断することにより、伝聞・非伝聞の結論を導きます。
たまに、「この書面は作成者甲の知覚・記憶・表現・叙述の各過程を経て作成されたものであるから、甲の供述過程の真実性が問題になるといえ、伝聞証拠に当たる。」と説明している答案を目にすることがありますが、それは間違っています。
ある書面が伝聞証拠に当たるか否かは、その書面が人の知覚・記憶・表現・叙述の過程を経て作成されたものであるか否かにより判断するのではありません。
伝聞証拠に当たるのは、公判廷外供述をその内容である事実を立証するために用いる場合です。
書面ならば、人が知覚・記憶して書面に表現・叙述した(とされる)事実を立証するために用いる場合です。
したがって、人の知覚・記憶・表現・叙述を経て作成された書面であっても、作成者が知覚・記憶して書面に表現・叙述した(とされる)事実を要証事実とするのではなく、そのような記載のある書面が存在していること自体(これを「書面の存在・記載自体」といいます。)を要証事実とする場合には、伝聞証拠に当たりません。
伝聞・非伝聞の区別では、形式説を前提とした伝聞証拠の意味を深く正確に理解することが極めて重要です。
分からない時は、定義に立ち返り、納得できるまで何度も何度も思考してみましょう。
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