憲法の答案を添削していると、違憲審査基準の定立過程にそれなりに大きな配点があることを意識するあまり、とにかくたくさん書こうとの思いから、その厳格度の違憲審査基準を導くために必要とされる要素、当該事案類型における違憲審査基準の相場、文章の流れなどを無視して、気が付いたことを羅列してしまう答案を目にすることがあります。
その結果、何が理由となってその厳格度の違憲審査基準が導かれるのかが分からない答案になったり、当該事案類型における違憲審査基準の相場を無視した答案になってしまうことがあります。
例えば、表現内容規制については、低価値表現であるなどの特殊な事情がない限り、原則として厳格審査基準が適用されるのですから、当該表現の重要性と表現内容規制であることに加えて、規制態様として規制範囲が広いだとか罰則が付いているから強度であるなどと論じても、たいして説得力がないわけです(しかも、少なくとも罰則の存在は、違憲審査基準の定立過程で考慮するものではなく、手段必要性の審査で問題にする余地があるにとどまるものです)。それどころか、当該違憲審査基準を導く理由としての各要素の重要度が伝わりにくくなります。せいぜい、事前規制である場合には、規制態様として表現内容規制であることに加えて事前規制であることにも言及する程度にとどめるべきです。
また、「当該表現は重要である。しかし、事後規制にとどまる。もっとも、表現内容規制である。」といった流れで書くと、仮に厳格審査基準を採用した場合には「事後規制にとどまる」という違憲審査基準を緩やかにする要素に言及していることと整合しませんし、中間審査の基準を採用した場合には「表現内容規制については、低価値表現であるなどの特殊な事情がない限り、原則として厳格審査基準が適用される」という当該事案類型における違憲審査基準の相場と整合しません。したがって、上記場合には、「事後規制である」ことについては言及しない方がいいです。
さらに、違憲審査基準の定立過程では、接続詞の使い方も含めて文章の流れを整理する必要があります。 違憲審査基準を厳格にする要素を+、緩やかにする要素を-とする場合、観点が「+、-、+」の3つであるなら、「+、-、+、中間審査の基準」だと流れが悪いので、「確かに+、また+、しかし-、そこで中間審査の基準」という流れにするべきです。
憲法の違憲審査基準の定立過程では、こうしたことにも配慮するして答案を書けるようになる必要があります。
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