明日から予備試験の論文式試験が実施されます。
近年の出題傾向も踏まえながら、科目ごとに最低限注意するべきことをお伝えいたします。
憲 法
予備試験では、重要判例を正面から出題する傾向にあり、令和5年(NHK記者証言拒絶事件)と令和6年(団体の構成員の信教の自由と協力義務の限界)には、「保障→制約→違憲審査基準の定立→目的手段審査」という枠組みで処理することができず、参考判例を知らなければ判断枠組みレベルのことで間違えることになる問題が出題されています。したがって、問題を解く際には、元ネタになっている参考判例を想起して、正しい判断枠組みを選択することが重要になってきます。
他方で、ちゃんとおさえていない判例が出題されることもあるかもしれません。その場合は、不正確でも構いませんから、可能な範囲で参考判例を踏まえながら判断枠組みを構築すれば足りますし、最悪、何も書けないくらいであれば、「保障→制約→違憲審査基準の定立→目的手段審査」という判断枠組みに寄せて書いても構いません。判断枠組みレベルことで勝負できないのであれば、中身レベルのことでなるべく加点要素を拾うために、部分的に判例や学説に言及するべきですし、あとは、とにかく問題文の事実を答案で使いまくりましょう。そうすれば、判断枠組みレベルのことで大外ししていても、C評価くらいにはとどまることができるはずです。
行政法
行政法では、処分性・原告適格・行政裁量をはじめとする重要分野から頻繁に出題されます。処分性では、土地区画整理事業計画決定の処分性を認めた平成20年最大判、病院開設中止勧告の処分性を認めた平成17年最判といった参考判例が出題されることも多く、こうした判例理論を使って論じることも重要になってきます。
また、委任立法の限界(令和1年)、公害防止協定の法的拘束力(令和2年)、附款(令和3年)といったややマイナーな分野から出題されることもあるので、マイナー分野についても、最低限の見直しはしておきましょう。
民 法
民法では、典型論点を正面から出題する傾向が強い一方で、条文の類推適用や判例理論の転用もばんばん出題されます。直近でも、販売委託契約に基づく販売権限の消滅後に受託者が目的動産を処分した場合における112条類推適用の可否(令和5年)、誤振込金による弁済事例における騙取金弁済に関する判例理論の応用(令和6年)が出題されています。
典型論点についてしっかり論じた上で、こうした応用問題も落とさないことがA評価を取る上で重要になってきます。
商 法
会社法では、典型論点重視の出題がされることも多いですが、条文操作メインの出題がされることも少なくありません。これは司法試験と予備試験に共通する出題傾向であり、会社法では、条文を正しく選択した上で、当てはめにおいて問題文の事実と条文の文言を一つひとつ結び付けながら論じるという、条文操作も重視されています。会社法の真の実力は、論点ではなく、条文操作で測ることができるといっても過言ではありません。
なお、手形法については、平成24年と平成28年に出題されており、それ以降出題されていません。2027年3月末)をもって紙媒体の手形・小切手の利用が廃止されることもあり、予備試験論文で出題される可能性は低いといえます。もっとも、出題可能性はゼロではありませんから、念のため、Aランクの超重要論点(交付欠缺、17条、裏書不連続手形の善意取得、後者の抗弁、二重無権の抗弁など)と手形理論の基本事項くらいはおさえておきましょう。また、知らない論点が出題された場合は、権利の発生・移転・行使のうちどの部分が問題になっているのかを正しく把握した上で、「手形の流通促進→手形取引の安全強化」といった基本事項を踏まえて自分なりに論じることができれば、合格答案になるはずです。
民事訴訟法
民事訴訟法では、現場思考要素の強い平成24年の難問を除けば、重要な判例・学説をベースにした出題が多いので、勉強したことが報われやすい科目であるといえます。
民事訴訟法は、理論重視の少数論点型の科目であるため、一部の科目のように、理由付けを飛ばしていきなり規範を定立するという書き方は通用しません。理論面についてもちゃんと論証するようにしましょう。
刑 法
刑法で大事なことは、①罪名(大)、②論点(中)、③当てはめ(小)という大・中・小の加点要素をなるべく多く網羅することが重要になってきます。超多論点型の問題であるため、一つひとつについて丁寧に論じている余裕はありません。
論述の丁寧さよりも、加点要素の網羅性を最優先しましょう。論証の理由付けも、バンバン飛ばして構いません。
刑事訴訟法
刑事訴訟法では、少数論点型の問題で、重要論点を正面から出題してきます。したがって、メイン論点を落としたり、理論面で明らかに間違ったことを書くことは、致命傷に繋がりかねません。
少数論点型である以上、理論面と当てはめのいずれについても、丁寧に論じる必要があります。理論面では、原則として理由付けも必要ですし、当てはめでは、問題文の事実を全て使い切るくらいの気持ちで書くとともに、重要事実についてはちゃんと評価をする必要があります。この意味において、刑法と真逆の科目であるといえます。
以上が私から皆様へのメッセージとなります。
ご健闘をお祈り申し上げます。
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