加藤喬の司法試験・予備試験対策ブログ

質問コーナー

司法試験論文対策として旧司法試験過去問までやるべきか

いつもお世話になっております。
先日は、令和3年以降の司法試験の民事訴訟法論文の対策として旧司法試験過去問までやるべきかについて御回答いただき、誠にありがとうございます。
民事訴訟法以外で、司法試験論文対策として旧司法試験過去問までやっておいた方が良い科目はありますでしょうか。
お忙しいところ恐れ入りますが、何卒よろしくお願い申し上げます。

憲法については、平成30年~令和2年の過去問の演習・分析・復習を繰り返すことで、㋐違憲審査基準の定立・適用も含めて「違憲審査の基本的な枠組み」を正しく使いこなすようになること、㋑個別法の仕組みを把握する力を鍛えること、㋒問題文のヒントに食らいつき、違憲審査の基本的な枠組みに落とし込む形で問題文のヒントを法的に構成し、その内容を文章化して答案に反映するために必要とされる姿勢・思考力・文章力を鍛えることが一番重要です。近年は、人権選択で悩ませる出題もなくなりましたし、同種事案からの出題に備えるために旧司法試験過去問をやる必要はないと考えます。

民法は、司法試験過去問だけでは出題範囲の1/3くらいしかカバーすることができませんが、旧司法試験過去問をやっていれば令和2年司法試験設問2・3のような問題にも対応することができるかというと、そうではないと思います。出題範囲が広い民法では、出題範囲の大部分について演習を経験するというのは不可能に近いですし、効率が悪いとも思います(他科目の勉強に時間を使った方が良いです)。司法試験過去問を通じて請求・論点を抽出する読解・思考のコツを掴むとともに、一元化教材を繰り返し読むことで知識を強化しておけば、十分です。したがって、民法についても、旧司法試験過去問は不要です。

商法(のうち、会社法)については、司法試験で予備試験過去問が流用される傾向が強いですから、旧司法試験過去問よりも、予備試験過去問をやったほうがいいです。出題の実績・傾向等を踏まえると、平成23年・平成24年・平成26年・平成28年・平成29年あたりが重要であると考えます。

民事訴訟法については、前に回答した通り、昭和の問題も含めて旧司法試験過去問(事例問題に限ります)までやっておきましょう(これに関するQ&Aはこちら)。

刑法については、司法試験で旧司法試験過去問の類題が出題される可能性は高いと思います。もっとも、旧司法試験過去問の刑法は、典型事例からずらすなどとして、敢えて理論構成が難しい問題にしている、という印象です。司法試験過去問では、理論構成で悩ませる問題は出題されない傾向にありますから、旧司法試験過去問は司法試験対策として過剰であると考えます。司法試験過去問の穴をカバーするためには、旧司法試験過去問ではなく、捻りが少ない佐久間・高橋ほか「ロープラクティス刑法」をやった方が良いと思います。

刑事訴訟法については、司法試験過去問で出題範囲の大部分をカバーすることができますから、仮に旧司法試験過去問や市販演習書をやるとしても、司法試験過去問で出題されていない分野・論点・事案類型に絞るべきです。近年の出題傾向を踏まえると、旧司法試験過去問よりも、古江賴隆「事例演習刑事訴訟法」のほうが良いと思います。

2020年10月10日
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加藤ゼミナールは、加藤喬講師が代表を務める予備試験・司法試験のオンライン予備校です。

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加藤ゼミナール代表取締役
加藤 喬かとう たかし
加藤ゼミナール代表取締役
弁護士(第二東京弁護士会)
加藤ゼミナール代表
青山学院大学法学部 卒業
慶應義塾大学法科大学院(既修) 卒業
2014年 労働法1位・総合39位で司法試験合格
2021年 7年間の講師活動を経て、「法曹教育の機会均等」の実現と「真の合格実績」の追求を理念として加藤ゼミナールを設立
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